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「悪ぃな先生。一郎が居るんじゃ俺が手伝うまでもなさそうだ。帰んぜ」
「でも左馬刻君、君はかつて彼と、」
「だったらなんだ」
先生を睨みつける鋭い視線に私までごくりと唾を飲んだ。
関係ねえ。近づくな。
そう言わんばかりに背中を見せる。
「今はお互い潰し合いしてんだ。わかってんだろ」
馴れ合いなんてさらさらごめんだ。彼は言う。
きっと彼も一郎君もいわゆるチームというのに所属し争っていて、なのにこうしてディビジョンを越えて来てくれて。
「……っ、まって……!」
「あ゙?」
診察室の扉に手をかける直前、自然と彼のシャツの裾を掴んだ。
さっきは関わりたくないと思ったのに。
「あ、貴方にも、どうしても会いたい人は、
居ないですか……っ!?」
「──────。」
我ながら馬鹿だ。
引き止めてまで意味もない質問をして困らせてる。
そんなことで彼が踏み留まるなら、
「…………おい、名前」
「え?」
「言いから名乗れ。名前」
それはテメェの顔覚えとくからな的な?
Aです。
恐る恐るそれを口にすると、一瞬目を見開き彼はもう一度と急かす。
「昏夜、A、です」
A。
彼の唇が私の名前をなぞって何かを呟いた。
やっとか。
その言葉の意味を知ったのはもう少し後のことだった。
「一番手っ取り早いのは簓さんの公演に行ってみることだな。場所も時間も確実だし、実際会えるかどうかは……まあ面識があるならなんとかなるだろ」
分かったらまた先生に連絡するから、と病院の入り口で一郎君が優しく声をかけてくれる。
一二三さん達には事情を話して先に帰ってもらった。
直接連絡は取れないのかと聞いてみると、彼は少し罰が悪そうな顔で微笑んだ。
「取れないこともねぇが……少し事情があるんだ。悪いな」
「そっか。……ううん、宜しくお願いします」
「ああ!」
私も慣れないながらに手を振り返す。
じゃあな!と去っていく姿まで爽やかだ。
腐っても十代。若いって羨ましい。
それに比べて……。
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るる(プロフ) - 簾さん» 簾様、誤字のご指摘ありがとうございます。該当のページは修正させて頂きました。また何かお気づきの点ございましたらご報告頂ければ幸いです。 (2022年8月16日 22時) (レス) id: b70bae4cdb (このIDを非表示/違反報告)
簾 - day46の最後、るるって作者様のお名前ですか…? (2022年8月16日 21時) (レス) @page21 id: 7996fa9caa (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 朱鳥さん» 朱鳥様コメントありがとうございます。星評価足りないなんてとても嬉しいお言葉ありがとうございます。いよいよ二人の新展開が始まりました!今後とも更に楽しんで頂けるよう頑張りますので乞うご期待ください。サイト開設しましたらまた告知させて頂きます。 (2022年1月6日 10時) (レス) id: b70bae4cdb (このIDを非表示/違反報告)
朱鳥(プロフ) - 更新お疲れ様です。どんどん引き込まれていく展開で毎回ハラハラドキドキしてます。たくさん押したいのに星の評価が足りないくらいです。サイト開設されましたら是非、そちらも見に行かせていただきたいです。 (2022年1月5日 0時) (レス) @page46 id: 53a215b2a7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - なっつさん» なっつ様コメントありがとございます。過去作まで何周もして頂いてとても嬉しいです!今後とも続きを楽しみにお待ちください!お気遣い頂きありがとうございます。なっつ様もお身体に気をつけて。サイトも開設しましたら告知させて頂きます! (2022年1月3日 10時) (レス) id: b70bae4cdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るる | 作成日時:2021年11月15日 21時