▼Day.40 ページ4
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「悪いが今日は寝させてくれ。流石に頭が限界だ」
「え、あ!でも…!」
パタン
「いっちゃった……」
観音坂さんはふらふらと今にも倒れそうな状態で部屋に消えていった。
彼を止めようと宙に浮いた手がどうしようもなくなる。
(とりあえず朝になったら話し合おうってことなのかな)
「つまり泊まれってこと…?」
どこに居ていいのか分からないのに…。
観音坂さんに聞けばよかった…。
でも漸く床につけたであろう彼を起こすのも憚れる。
あの顔は恐らく何徹もした人間の顔だ。
流石にこんなことで起こすのも可哀想だよね。
とりあえず目についたソファーに腰を下ろす。
自宅のソファーより何倍もふかふかなのは質の問題か、はたまた使われる回数の問題か。周りを見渡しても見慣れない家具達が違和感を放ってきた。
(本当に、私の家じゃないんだ)
場所も間取りも同じ。しかし室内の雰囲気も住む人間も全く別物。足を抱えて横になってみる。
「寒い…、どうしてこんなことに」
呟いてみたって誰かが返事をする訳ではない。
聞こえてきたのは壁時計が時を刻む音だけ。
身体がぶるりと震えた。
目についたブランケットを拝借し、申し訳程度に足にかける。
(きっと夢だ。目覚めたらまた温かい布団が迎えてくれる)
私ができることは祈ることだけ。
目の前の寒気も腹の奥に湧き上がる痛みも、全部気のせいだと思い込むだけ。
大丈夫、大丈夫。私の意識はゆっくりと沈んでいった。
──────顔真っ赤や。
トーンを落とした男の声。
じんわりと触れられた手首が熱い。
私の顔を覗き込むように動く身体。
熱は?薬は?と聞いてくる彼の顔は見えない。
(貴方が誰なのかわからないの)
それでも今、私はその声に安心感を覚えている。
Aちゃんって呼んで、嬉しそうに笑う声が聞こえてくる。
夢の中の彼に、私はいつ出会えるのだろう。
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るる(プロフ) - 簾さん» 簾様、誤字のご指摘ありがとうございます。該当のページは修正させて頂きました。また何かお気づきの点ございましたらご報告頂ければ幸いです。 (2022年8月16日 22時) (レス) id: b70bae4cdb (このIDを非表示/違反報告)
簾 - day46の最後、るるって作者様のお名前ですか…? (2022年8月16日 21時) (レス) @page21 id: 7996fa9caa (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 朱鳥さん» 朱鳥様コメントありがとうございます。星評価足りないなんてとても嬉しいお言葉ありがとうございます。いよいよ二人の新展開が始まりました!今後とも更に楽しんで頂けるよう頑張りますので乞うご期待ください。サイト開設しましたらまた告知させて頂きます。 (2022年1月6日 10時) (レス) id: b70bae4cdb (このIDを非表示/違反報告)
朱鳥(プロフ) - 更新お疲れ様です。どんどん引き込まれていく展開で毎回ハラハラドキドキしてます。たくさん押したいのに星の評価が足りないくらいです。サイト開設されましたら是非、そちらも見に行かせていただきたいです。 (2022年1月5日 0時) (レス) @page46 id: 53a215b2a7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - なっつさん» なっつ様コメントありがとございます。過去作まで何周もして頂いてとても嬉しいです!今後とも続きを楽しみにお待ちください!お気遣い頂きありがとうございます。なっつ様もお身体に気をつけて。サイトも開設しましたら告知させて頂きます! (2022年1月3日 10時) (レス) id: b70bae4cdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るる | 作成日時:2021年11月15日 21時