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「Aが居候??」
「おう!」
有栖川さん…ではなく、帝統さんはゲーセンを出て開口一番にそう言った。嬉しそうに歯を見せて笑う一二三さんと裏腹に眉を顰める私。
「相引きではなかったんですね」
「その言い方やめてください幻太郎さん」
「いい年した男女がこんなところにいたら誰でもそう思いますよ」
最初こそ印象の悪い二人だったがそれも考えすぎだったみたい。
今は抱えきれないぬいぐるみを二人が代わりに持ってくれ申し訳がない。
名字は呼ばれ慣れないと、名前を呼ぶことを許してくれる寛容さ。
「なんだ。Aも金ねえのか」
「ち、ちがいますよ!これには事情があって…!というか、も、ってなんで…!」
「さっきホストの彼が言ってたでしょう。この馬鹿今日もとある賭場で一文なしになり、それでもギャンブルをしたいというからあのような場所へ……。」
「あーくそー!やっぱ金賭けねえとやりがいねえな!」
「帝統さんってクズですか?」
「ご覧の通りクズですよ」
そんな辛辣なこと言って満面の笑み……。
一二三さんと独歩さんとも違う個性に圧倒されていると、どこからか電子音が聞こえてきた。
「あ、店からだ」
「………!あ!?一二三さん仕事!!」
「あっちゃーもうこんな時間かあ。もうちょい遊びたかったけどなあ」
気がつけば外は夕暮れに近づいている。
彼の仕事を考えればそろそろ仕事に行かなければならない時間だ。
一二三さんは残念そうな顔で笑うと、抱えていたジャケットを羽織り襟を正した。
「本当は家まで送りたかったんだが……一人で帰れるかい?」
「あ、は、はい」
あ。いつものホストだ。後ろから二人の声を耳にする。
そうだった、今はもう一人の一二三さんか。
「僕はお店に行かなきゃならない。夜道に気をつけるんだよ子猫ちゃん。そこの人みたいに変態も居るからね」
「はい気をつけます」
「誰のこと言ってんだ?」
「帝統に決まってるでしょ」
後ろの二人のいがみ合いは置いといて。
「いってらっしゃい。一二三さん」
「……!うん、いってきます」
そう言って一二三さんは豊かな薔薇の香りを振り撒いて夜の街に消えて行った。
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るる(プロフ) - 簾さん» 簾様、誤字のご指摘ありがとうございます。該当のページは修正させて頂きました。また何かお気づきの点ございましたらご報告頂ければ幸いです。 (2022年8月16日 22時) (レス) id: b70bae4cdb (このIDを非表示/違反報告)
簾 - day46の最後、るるって作者様のお名前ですか…? (2022年8月16日 21時) (レス) @page21 id: 7996fa9caa (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 朱鳥さん» 朱鳥様コメントありがとうございます。星評価足りないなんてとても嬉しいお言葉ありがとうございます。いよいよ二人の新展開が始まりました!今後とも更に楽しんで頂けるよう頑張りますので乞うご期待ください。サイト開設しましたらまた告知させて頂きます。 (2022年1月6日 10時) (レス) id: b70bae4cdb (このIDを非表示/違反報告)
朱鳥(プロフ) - 更新お疲れ様です。どんどん引き込まれていく展開で毎回ハラハラドキドキしてます。たくさん押したいのに星の評価が足りないくらいです。サイト開設されましたら是非、そちらも見に行かせていただきたいです。 (2022年1月5日 0時) (レス) @page46 id: 53a215b2a7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - なっつさん» なっつ様コメントありがとございます。過去作まで何周もして頂いてとても嬉しいです!今後とも続きを楽しみにお待ちください!お気遣い頂きありがとうございます。なっつ様もお身体に気をつけて。サイトも開設しましたら告知させて頂きます! (2022年1月3日 10時) (レス) id: b70bae4cdb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るる | 作成日時:2021年11月15日 21時