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(月のもんって…。)
ああそういうことか、と帰り道漸く理解した。
暫く男所帯の場所にしか居らんかったから忘れてた。
中王区が発起して女性との関わりを心なし避けていたのもある。強いて自分が関わってた女の子は合歓ちゃんぐらいや。
「ただいまあ」
そっとしといた方がええって、そんな腫れ物扱いしてええんやろか。でもおばちゃんが言うなら間違ってへんのやろなあ。
(女の子って大変や。…男も色々大変やけど)
考えれば勝手に疼く身体。
むず痒くなった腰周りから意識を避け、慣れた手つきでリビングの扉を開けた。
「Aちゃん、もしかしてやけど……
……………んあ?」
そう、男の子やって大変なんや。内に秘めた生存本能は否定できひんし、こんな環境下で自己処理できるわけないし。
「…………こらあ、おかしな事になって、」
なのにどうして彼女はこういうことをしてしまうんやろう。
無意識…なんやとは思う。てか俺の気持ちなんて何も考えてへん。伝えてへん俺も俺やけど。
今日は晴れて昼寝には最適な陽気やった。
ソファーで寝息を立てた小さな身体が蠢めく。足元に積み上げられた洗濯物が倒れる様子は、なけなしの理性も崩すようだった。
「なんでんなもん抱えてん寝てんねん…っ。」
Aちゃんの阿呆。
俺の大事なジャケット、皺なってまうやないかい。
「はぁぁぁぁ〜……………」
こんな長いため息ついたんは久しぶりや。なんとか自制心を効かせて側にしゃがみ込む。気配を察して身じろぐ姿に心臓がきゅんとして堪らなかった。
休みに早起きしてまって眠かったんやな。それは分かる。洗濯物畳んでるうちに寝てしまったんかな。それも分かる。
(だからって、これは反則やろ)
「………っ」
抱き抱えられた自分のジャケットが疎ましく感じた。
そこから香る煙草の匂いが嫌だと嘆いていたのに、まるで宝物でも隠すような姿に赤面してしまう。恥ずかしゅうて見てられへん。
「…なあ、それは簓さんやないで」
知ってる。
どこからかそんなAちゃんの声が聞こえてきそうだ。うん、分かっとる分かっとる。たまたまええ抱き枕があったからな。そういうことにしといたるわ。
そういうことに……。
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るる(プロフ) - たらいさん» たらい様コメントありがとうございます。大好きなんて言って頂いて本当に嬉しいです!ぜひ次の更新も楽しみにお待ち下さい。応援宜しくお願い致します! (2021年11月14日 7時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
たらい - るるさんの話大好きです!いつも楽しみにしてます!! (2021年11月13日 18時) (レス) @page46 id: 3170693201 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 八守葵さん» 葵様コメントありがとうございます。本日更新分で更に辛い展開かもしれません…。これが普通なのに腑に落ちない二人です。また二人が出逢える日はくるのでしょうか。作者多忙につき更新ゆっくりですが気長にお待ち下さい! (2021年11月5日 10時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - うわぁぁっ……待って辛い。夢主ちゃんとの時間は夢で終わらせられないくらい幸せなのに……空元気みたく笑う白膠木さんが目に浮かぶ。正常に戻った筈なのにモヤモヤする…… (2021年11月1日 5時) (レス) @page42 id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 八守葵さん» 葵様コメントありがとうございます。お馴染みのしんどい展開ですみません…漸く帰れる可能性が出てきたのに戸惑いが隠せないですね。出会う筈のなかった二人の運命はどうなってしまうのでしょうか。乞うご期待ください。 (2021年10月17日 23時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るる | 作成日時:2021年9月26日 1時