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「内緒や言うてたけど、あの花。
簓さんが貴女を想って選んだんですよ」
(消えない)
帰って取り込んだ洗濯物に鼻を擦り寄せる。
何度洗ったって消えないタバコと香水の香り。
「あの人…ささらさんって言うのかな」
ぎしり。ベランダの柵にもたれ掛かれば異音がしたが、頭の中は居もしない人物のことでいっぱいだ。
───あ、もしかして例の…。
───弟さん急に辞めちゃったから寂しいわ。
───姉ちゃん!今度兄ちゃんとお花買いに来てな!
───簓さんが貴女を想って選んだんですよ。
なぜ私以外が彼を知ってる?
急にぞくりと背中が粟立った。もしかして、
「私だけが彼を忘れてる?」
はと、脳裏に浮かんだ言葉を口にした。
その時だった。
ガシャンッ!!!!
「!」
不敵な金属音と共にふわりと身体を襲う浮遊感。
「え。」
あれ、なんで私ベランダから落ちてるの?
落ちる?柵が取れた?なぜ?
「──────っ!!」
投げ出された身体に突如重力がかかり頭が理解を始める。
先程の異音を思い出して、老朽化で朽ちたベランダに目をやった。
(だれか)
辛うじて伸ばした手が空を切る。
だれかなんて願っておいて、私の声から出た名前はたった一つだった。
「ささらさ、ん」
いつだって終わりは突然だ。
それでも自分の人生が突然終わるなんて、思ってもみなかったんだ。
視界の端にアネモネは咲く。
ガコーン!!!
「あたっ!!!冷た…っ!!!!」
「っ!?」
世の中には不思議なことがたくさんあるらしい。
「いたた…、なにここ…お風呂…?」
「あわわ…な、な、」
「?」
それらは平凡な私の日常を容易く壊し、セカイを変えていく。
「なななな…!な、んで女の子が、!」
「!?は、はだ、…!!?」
「いいいいやこれはストレスだ…!あのハゲ課長のせいで朝まで仕事してたせいだ!遂に幻覚がみ、みみみ見えて…!!!じゃなきゃ俺の家に女の子が居るなんてありえな、」
「んの…っ…!!」
「え?」
そう。これは私が彼の世界にきたトクベツ可笑しなお話だ。
「この変態がっ!!!!!!!」
「あがっ!!!???」
▼RE:start
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るる(プロフ) - たらいさん» たらい様コメントありがとうございます。大好きなんて言って頂いて本当に嬉しいです!ぜひ次の更新も楽しみにお待ち下さい。応援宜しくお願い致します! (2021年11月14日 7時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
たらい - るるさんの話大好きです!いつも楽しみにしてます!! (2021年11月13日 18時) (レス) @page46 id: 3170693201 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 八守葵さん» 葵様コメントありがとうございます。本日更新分で更に辛い展開かもしれません…。これが普通なのに腑に落ちない二人です。また二人が出逢える日はくるのでしょうか。作者多忙につき更新ゆっくりですが気長にお待ち下さい! (2021年11月5日 10時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - うわぁぁっ……待って辛い。夢主ちゃんとの時間は夢で終わらせられないくらい幸せなのに……空元気みたく笑う白膠木さんが目に浮かぶ。正常に戻った筈なのにモヤモヤする…… (2021年11月1日 5時) (レス) @page42 id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 八守葵さん» 葵様コメントありがとうございます。お馴染みのしんどい展開ですみません…漸く帰れる可能性が出てきたのに戸惑いが隠せないですね。出会う筈のなかった二人の運命はどうなってしまうのでしょうか。乞うご期待ください。 (2021年10月17日 23時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るる | 作成日時:2021年9月26日 1時