. ページ19
.
「いんやー!満足満足!待ってた甲斐があったわ〜」
「たまの贅沢に感動しすぎ」
「寿司だけに、今ならええネタがヒラメきそう!」
「ふっ…なにそれっ。寒いギャグね」
とか言って呆れた顔でも笑ってくれるだけで気持ちがふわふわとする。二人で半分こしたビールはいつの間にか無くなっていて、寿司にも彼女にも夢中だったことを今更理解した。
「お茶飲む?」
「飲む飲む」
「じゃあ淹れて」
「俺が淹れんのかい」
「寿司代請求するよ?」
「イクラはいくらでっかー!」
「はいはい」
「あ。」
ふと立ち上がって移動するとAちゃんの口元に目がいった。薄ピンクの唇にごくりと生唾を飲んだ、が気になるのはそこやなくて。
「目瞑ってくれへん?」
「ええ?また?」
「すぐ終わるから」
「……すぐね、本当だよ?」
余りにも素直に従った彼女を見て、今度は俺が不安になった。どうしたらこんなとこにつくんやろ、と白い頬に静かに笑う。
ああ、あかんやん。
前より信頼されたようやけど、こら危険すぎる。
(────長いまつ毛に、甘い匂い)
ええ年の姉ちゃんがおべんとつけてどこ行くねん。
みっともない格好でも簡単に心が抉られてしまう。
そんくらい彼女がだいすきらしい。
手でもええんねんけど、
(今だけは許してな)
「あむ。」
「ん、」
びくりと肩が小さく揺れた。
もう終わった?と恐る恐る目を開くとばちりと俺と目が合う。
「………近い」
「ふはっ、姉ちゃん可愛らしいとこもありまんなあ」
「ほっぺがぞわっとした。何したの」
「ナイショ。ヒミツ♡」
「ハート付けても可愛くない」
「ええ、こんなイケメンやのに?」
「簓さんは残念なイケメンだから」
はよお茶淹れてこいと手で払われ、へえへえとキッチンに向かった。触れんことを気に病んでいたが、悪いことばかりでもないらしい。
(ちゅーくらいで心臓壊れるかと思った)
まるで童貞の頃の自分に戻ったようや。身体の外までどきどきが聞こえてしまいそう。深く深呼吸をして限界まで吐く。
「簓さん」
「…っ!な、なに!?…だっ!」
「うわ痛そ」
机の角に小指が…!
涙ながらに足を抑え慰めていると、Aちゃんが悲しそうな顔で笑っていた。
「あのね、思い出したよ。あの言葉のこと」
ずっとお星さんに願ってん。
その日が来ないことを望んでるんは、俺だけやないって。
▽流れ星は二人に降らない
.
188人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るる(プロフ) - たらいさん» たらい様コメントありがとうございます。大好きなんて言って頂いて本当に嬉しいです!ぜひ次の更新も楽しみにお待ち下さい。応援宜しくお願い致します! (2021年11月14日 7時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
たらい - るるさんの話大好きです!いつも楽しみにしてます!! (2021年11月13日 18時) (レス) @page46 id: 3170693201 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 八守葵さん» 葵様コメントありがとうございます。本日更新分で更に辛い展開かもしれません…。これが普通なのに腑に落ちない二人です。また二人が出逢える日はくるのでしょうか。作者多忙につき更新ゆっくりですが気長にお待ち下さい! (2021年11月5日 10時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - うわぁぁっ……待って辛い。夢主ちゃんとの時間は夢で終わらせられないくらい幸せなのに……空元気みたく笑う白膠木さんが目に浮かぶ。正常に戻った筈なのにモヤモヤする…… (2021年11月1日 5時) (レス) @page42 id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 八守葵さん» 葵様コメントありがとうございます。お馴染みのしんどい展開ですみません…漸く帰れる可能性が出てきたのに戸惑いが隠せないですね。出会う筈のなかった二人の運命はどうなってしまうのでしょうか。乞うご期待ください。 (2021年10月17日 23時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:るる | 作成日時:2021年9月26日 1時