私と白膠木さんのどつかれた日常譚 FINAL【白膠木簓】

▼last tragic ページ36

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テリトリーバトルが終わり暫く。


私達は住み慣れたオオサカへと戻り、平凡な日常を送っていた。結果はどうであれ、彼等の活躍は忽ちオオサカ中に知れ渡り、今ではファンクラブが出来るまでになったらしい。


そのお陰かどうかは分からないが、幼馴染の仕事も一層忙しくなったようで。




「うわ…雨…」




地元の駅に着いた途端、どしゃ降りとは全く持って運が悪い。走って帰るには距離があるし、かと言ってここからじゃ傘を買いに行くにも濡れてしまう。折角仕事早く終わったのになあ。




(止むまで待つか)




とりあえず壁際に寄って雨が上がるのを待つことにした。ただの夕立でありますように、と祈る合間に一通のメールを打つ。




「雨、降ってるよ、っと」




朝来ていたメールにそのまま返信する。こんな時間に彼は帰ってこないのに。だが送ったそれを取り消すこともできないし、まあいいかと視線を空に戻した。




「無事にロケ終わったかな」




しとどに降る雨。頭に浮かぶのは幼馴染の顔。月曜日から彼が仕事で家に居ないため、私は久しぶりの一人暮らしを満喫していた。


今回の仕事は盧笙さんと零さんも一緒で、各ディビジョンを巡るスペシャル番組らしい。移動が多い長期のロケ、出発前に駄々を捏ねていた彼の姿が記憶に新しい。




pipi


「？これは、」




返信が来たかなと携帯を開くと差出人は彼ではなかった。ほんの少し眉間に皺が寄る。だが内容を見てみれば思わず声を出しそうになった。



差出人は乱数くん。内容はとある有名デザイナーと行う大型ファッションショーに私も出演して欲しいとのこと。おまけにこれはその男の直接オファーらしい。




「こんなチャンス逃すわけがないでしょ…！」




快諾の返事をすると何秒もしないで返信が返ってきた。一時は引退も考えたが辞めなくて良かったと、今では心からそう思う。




あの一件以来減ってしまったモデルの仕事。

こうしてまたカメラの前に戻れたのは乱数くんのお陰だ。




キッカケは、彼がお祝いにと仕立ててくれたドレスを着た写真がSNSでバズったことだった。


それからあれよあれよと仕事は増え、今では毎日撮影があるぐらいにまで。流石人気デザイナー、首の傷を活かしてデザインを纏めるとは侮れない。


正直今でも彼の計画だったのではと思うけど…、それはあまり考えないでおこう。



何はともあれ、また好きな仕事ができるのはとても嬉しいことだ。



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