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ワッ
「!」
「動いたぞ」
急な歓声と理鶯さんの声に視線をステージに戻す。
「ささら、」
そこには片膝をつく彼の姿。落胆する声と歓喜する声。
ぶわっと冷や汗が背中を流れた。
すと細められた左馬刻様の瞳に小さく息を呑む。
「あれは山田一郎のラップスキル…!」
「土壇場に強ぇからな。相変わらずチートみてぇなスキルだ」
「カウント内に立てるかどうか」
「……は、」
簓が負ける?
隣からの諦めたような声にすくんでいた身体が更にすくんだ。
握っていた手を強く強く、更に強く。
「─────っ」
身体は弾かれたように自然と動いた。
「!?おい!A!?」
「っ、私、行かなきゃ!!」
「あ゙!?どこにいく気だテメェ!」
階段を駆け降りる背中に降り注ぐ声。お願い止めないで。
「A!お前が行ったところでもう…っ!」
後ろを向けば目に入るのは少し辛そうな赤い目。
私のただならない様子に周りも騒つき始めていた。
でも今はどうでもいい。
「まだだよ!!まだ終わってない!!
左馬刻様なら分かるでしょ!!」
「……!」
「あ、ちょ、!」
まるでいつか見た青春映画のようで、自分がこんなに諦めが悪いなんてびっくりした。走ることなど想定していなかったから適度なヒールが煩わしい。靴も脱いでしまいたいくらい。
それでもやらないと。今やらないと。
私が四人目だと言ってくれた三人の為に、
一番近くで見ていてと言った幼馴染の為に。
譲れないものはここにもある。
「っは、」
最後の段は転びそうになりながら降りた。
ステージに一番近い最前席。
やっとたどり着いた。
手摺りを掴んだのと声を出したのは、ほぼ同時だった。
「…っ、ささら!!!立って!!!!!」
彼は少し開いた瞳を私に向けて唖然としながらも口を動かす。
声は聞こえない。でもわかる。
A、傷だらけの簓は小さく私を呼んだ。
@main 私にできること
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るる(プロフ) - 八守葵さん» 葵様ありがとうございます!無事に完結して良かったです!これからも二人仲良く過ごしてくれると嬉しいですね!これからも応援宜しくお願い致します。 (2021年9月24日 9時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - 誕生日の前日ってことは今日ですよね?!完結と誕生日おめでとうございます!難しい言葉凄く知ってるから年上の方かな?白膠木さんと夢主ちゃんの関係性の名前が変わっただけで誕生日の祝い方は同じ何だろうなと思う今日この頃。作者様にとってより良い日が続きます様に! (2021年9月23日 5時) (レス) @page40 id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 八守葵さん» 葵様コメント有難う御座います。長かったですね!漸くここまで書けたと嬉しくなりました!きっと盧笙さんは号泣です(笑)ぜひエピローグまで読んで楽しんで頂けたら嬉しいです!こちらこそいつも応援ありがとうございました!他作品でもぜひ宜しくお願い致します。 (2021年9月22日 14時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - やっと……やっと実った…っ!白膠木さん、長年の想い届いて良かったねぇ!どついたれ本舗四人でならきっとどんなことも乗り越えられる!だから死が2人を別つまで…って誓ってキスして躑躅森さんに感涙して欲しい。作者様、こんな素敵な物語紡いで下さってありがとう! (2021年9月20日 14時) (レス) id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 八守葵さん» 葵様コメント有難う御座います。いつも笑ってるのは不安を隠すためだったら…っていうのは妄想ですが、絶対無敵じゃない白膠木さんもいいかなと思いました。お互いを想って応援できるようになった二人に乞うご期待を! (2021年9月6日 10時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るる | 作成日時:2021年8月19日 23時