私と白膠木さんのどつかれた日常譚 FINAL【白膠木簓】

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「さあって！いよいよやな！」




ステージの光が足元に届く。三人を見送ったらすぐに席に行かなきゃ。この光の先が勝利なのか、敗北なのか分からない。このひりついた戦いの果てに何があるのだろう。




三人の後ろ姿。昔は二人だった。
気がついたら一人になった。


─────そして誰も居なくなった。





「ほい！A！出番やで！」
「！」

「まずは零な！」
「あ？何すんだよリーダー」



「ええからええからっ

どついたれ本舗恒例のおまじないや！」





目の前に差し出された背中はここにいる誰よりも大きい。
それは幼い頃に見たお父さんの背中にそっくりで、





「………っ」





この背中を押して戻ってこなかったら？


もし、お父さんみたいに戻ってこなかったら？





「A」





ふわり。軽く上がった左手。
自分の意思と反して動く掌には細い指先が添えられていた。





「四人でどついたれ本舗や！な、盧笙」

「ああ。マネージャーのそれ、何よりも力出んねん。頼むわ」





それでも彼等が望むなら、私は笑って背中を押すだけ。





「零さんいってらっしゃい！」

「！」




トンッ





彼の大きな身体が動くくらいいつもより強く背中を押した。驚いたような零さんの顔に自然と口角があがる。

…存外送られるのも悪くねえなとハットを被り直す。じゃらりと揺れた首飾り。




「次は？」
「俺やな」




盧笙さんがベストを整えて私の前に立つ。
昔よりも誰かを支えられるように大きくなった背中。




「ふふっ、また幼馴染がご迷惑をおかけします」
「ああ任せとき。簓の相方は俺やないと務まらんやろ」




何やら近くで涙を堪える幼馴染がいるけど、ひとまずそこには触れないでおこう。





「盧笙さんっ！行ってらっしゃい！」
「おう！」





夢を追って挫折した彼はいない。
夢を追いかけて立ち上がる彼しかいない。

零さんの元に走る盧笙さんは緊張なんて微塵も感じられなかった。



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