. ページ15
.
「一郎が友達なら、俺はなんやろな」
10センチもない距離で整った顔を見つめた。
ああ相変わらず綺麗で可愛い。何度見たって何年見たって好きや。顔も性格も声も、全てが俺の視線を奪っていく。
「幼馴染は友達ともちゃうやろ。なんなんやろ」
「それは、」
「教えてやA」
「っ。」
唇に軽く触れればびくりと揺れた肩。純心を装う瞳が一瞬怯えたように震えた。前と同じく呼吸を奪うのは簡単や。でもたぶん、それじゃあ埋まらない。
浅い呼吸。
「白膠木簓は、Aにとってなんなん…っ」
彼女の肩口に顔を埋めて苦しむくらいに抱きしめると、ひゅっと息をした音がした。
お願いや、言葉にしてくれ。
Aのことになるとほんま弱いわ、俺。
幼馴染がよかった。幼馴染でよかった。
幼馴染じゃ物足りなくなって、幼馴染をやめたくなった。でもAがそのままがいいというから、やっぱり幼馴染でいることにした。
こんな人を好きになるなんて自分でも吃驚してん。
あのおとんとおかんを見てたら、そういうことにも消極的になるしなあ。不安がなかったわけやない。
ただ自分の隣にA以外が居るのは考えられへんかった。
「簓」
「ん、」
俺の名前、今まで何回呼んでくれたんやろか。怒ってる時だけは聞こえんふりしたけど、どこにいたって聞こえてきたんや。なんでやろな。たぶん俺の耳はA専用やねん。
「シンジュクの時、助けに来てくれて嬉しかった」
「…Aのおとんと約束してんから当たり前や」
「よく覚えてたよね。私すっかり忘れてたのに」
「でも守りきれんかった。傷が残ってしもた。」
「ううん、いいの。これはいいの
簓が守ってくれた証だよ」
Aの夢を奪ったと、ずっと心の中にあった罪悪感が薄れていくようだった。
腰に微かに感触。細く弱く、力なく震えて。
「簓はね、私にとって酸素みたい
簓がいないと私もダメなんだよ」
彼女の言葉に腕の力がふわりと緩んだ。
.
157人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るる(プロフ) - 八守葵さん» 葵様ありがとうございます!無事に完結して良かったです!これからも二人仲良く過ごしてくれると嬉しいですね!これからも応援宜しくお願い致します。 (2021年9月24日 9時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - 誕生日の前日ってことは今日ですよね?!完結と誕生日おめでとうございます!難しい言葉凄く知ってるから年上の方かな?白膠木さんと夢主ちゃんの関係性の名前が変わっただけで誕生日の祝い方は同じ何だろうなと思う今日この頃。作者様にとってより良い日が続きます様に! (2021年9月23日 5時) (レス) @page40 id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 八守葵さん» 葵様コメント有難う御座います。長かったですね!漸くここまで書けたと嬉しくなりました!きっと盧笙さんは号泣です(笑)ぜひエピローグまで読んで楽しんで頂けたら嬉しいです!こちらこそいつも応援ありがとうございました!他作品でもぜひ宜しくお願い致します。 (2021年9月22日 14時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
八守葵(プロフ) - やっと……やっと実った…っ!白膠木さん、長年の想い届いて良かったねぇ!どついたれ本舗四人でならきっとどんなことも乗り越えられる!だから死が2人を別つまで…って誓ってキスして躑躅森さんに感涙して欲しい。作者様、こんな素敵な物語紡いで下さってありがとう! (2021年9月20日 14時) (レス) id: e7d640d42f (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 八守葵さん» 葵様コメント有難う御座います。いつも笑ってるのは不安を隠すためだったら…っていうのは妄想ですが、絶対無敵じゃない白膠木さんもいいかなと思いました。お互いを想って応援できるようになった二人に乞うご期待を! (2021年9月6日 10時) (レス) id: 5e72f07573 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:るる | 作成日時:2021年8月19日 23時