私と白膠木さんのどつかれた日常譚 FINAL【白膠木簓】

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「おじゃましまー…


って試合前にダウンしてる人が二人もいるけど」

「はははっ、安心しろただの飲み過ぎだ」



豪快に笑う零さんが開けた扉の向こうには机に塞ぎ込んだ盧笙さんとソファーに寝転がる簓の姿。



「お、おはよう、さん…A…」
「盧笙さん大丈夫ですか？顔真っ青ですけど」
「平気へーき…どうせ試合が始まる頃には緊張で酔うてるのも吹っ飛ぶわ…うっ…」



せやからもうちょいだけ。そう言ってまた机に塞ぎ込めば小さな嗚咽に溜息が出た。

こいつらどんだけ呑んだら気が済むんだ。呆れてものも言えない。すると、二人に比べたらまだマシな零さんは少し用を済ませてくると部屋を出て行ってしまった。




「はあ…盧笙さん。とりあえずこれ水。口つけてないのでどうぞ」
「ああ、お、おきに…」




さてそろそろアイツも起こさないと。

ソファーを振り向けば腕で目元を隠して寝る簓。
腰を落としてその側にしゃがみ込んだ。




「ささらー。いつまで寝てんの、そろそろ起きて」
「ゔー…あかん、だめやて…」

「寝ぼけてないでほらっ。そんなんじゃ一郎に負けるよ！」
「それもいややぁ…」




駄目だ。起き上がる気配もない。


こうなったら力づくで、





「簓！いい加減に、」





私が目元を隠す彼の腕に手を伸ばした時だった。



少し動いた腕の下。眩しそうにいつもより細めた瞳の隙間に見慣れないものを見た。





(え。)




「…っ！！！」

「！？」


バチンッ





感電したみたいな衝撃が手に走る。




「あ、」

「は…っ」




あれ、今何が起きた。


彼も私も驚いた表情で今日初めて顔を合わせた。





「っ、A…お、おはよう！」
「お、おはよう…」


「あー…朝からこんなん見られてカッコ悪いなあ、ははは」

「………、」





自業自得でしょ。なんて冷たいツッコミすら口から出て来なくて乾いた笑いを目に写す。逸らされた視線。




「、よう寝たから校長先生も絶好調や」
「そ、それなら良かった」

「さーてそろそろやからな！ろしょー！大丈夫かあ！？」




彼は身体に掛けていたいつものオーダーメイドのジャケットを掴み直して立ち上がる。


大丈夫、いつも通りだ。落ち着け、落ち着け私。





「………っ、」





彼に気づかないように息を吐いて唇を噛む。



幼馴染で十数年、私の伸ばした手を初めて簓が拒否した。



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