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じゅういちがつのついたち ページ6
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__紅茶の日
気がつけば僕は、男の人の腕をがぶりと噛み、次に首筋を狙うところでした。血のしょっぱさが妙に舌に残り、僕の理性を徐々に奪って行きました。
男の人も抵抗していましたが、首根っこから手がふらりと離れ、やがて息もなくなりました。
僕が衝動に動いた結果はこんなもの。
驚きました。僕はもっと冷静に動けると思っていたのに。
僕はここで、はじめておかあさまの顔をよくみました。変わらぬ白く美しい顔立ちで、けれど僕の耳を撫でていた細い手は死んだようで。
彼女もあの男の人とにたような顔つきをしております。死んじゃったからでしょうか?
きっと本質的に、一緒だったのでしょう。
途端、少しおかあさまが憎らしく思えました。
_そういえば、彼女は僕のことを見なかった。
僕も彼女を見なかった。
でも、お互い愛してはいた。家族だった。
彼女は「僕の耳」を愛していたし、
僕も「彼女の存在」を愛していた。
それだけが
僕とおかあさまを繋いでいたのです。
今日はざくろ色の、この僕の耳が。
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作者名:おもちもち | 作成日時:2020年2月24日 23時