君の背中に伝えたかった想いは ＊4＊

番外編 -7- ページ31

【北山side】







あーもう…
なんでこんな風になっちゃうんだろう。







胸が締め付けられるように苦しくて、思わず家を飛び出した。




僅かな記憶を頼りに駅へと歩くけど、方向が合ってるのかすらよくわからない。

ケータイでマップを開こうとしたら、今度は無惨にも充電切れを告げられた。







「はぁ、」






ひとつ、ため息が零れるのと同時、藤ヶ谷の悲しそうな顔が頭に浮かんだ。




あんな顔、させたかったわけじゃないのにな…









＿キャハハ…




聞こえた笑い声に顔を上げると、視界に入った若いカップル。

しっかりと握られた手は固く、体を寄せ合い歩く姿は幸せたっぷりで…



そんな微笑ましい光景に
また、チクリと胸が傷んだ。









＿藤ヶ谷はおれに触れない。









あの日、お互いに好きだって気持ちを伝え合った日から、おれと藤ヶ谷は仕事終わりに一緒に帰ったり、時々2人でご飯を食べに行ったりと、少しずつではあったけれど共に過ごす時間を増やしていった。


楽屋でのあいつの定位置は相変わらずよこーさんの隣だし、目に見えてベタベタすることはなかったけれど
それもまぁ、おれ達らしいかって。



ただ一緒にいれることが嬉しかったし、
素直に、幸せだなって思った。








でも、気付いたんだ。






どんなに一緒に時間を重ねても、おれと藤ヶ谷の間にはいつも一定の距離があって。


何かの拍子に手が触れただけで『ごめん！』って、謝られてしまうし

撮影なんかで抱き合うことはあっても、カットがかかればあっという間に離れてしまう。






そんな中、考えないようにしようって思ってはいても、どうしても湧き上がってしまう不安。




・・・

番外編 -8-→←番外編 -6-

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す