君の背中に伝えたかった想いは

35 ページ37

・




わかってるよ


俺が話しやすいようにしてくれてるんだよね？


ほんと、この人には敵わないな…





『これから、どうするの…？』



遠慮がちに渉が尋ねる。



「別にどうもしないよ？
自分の気持ち、認めただけ。
北山に伝えるつもりはないから。」



『…太輔は、それでいいの？』



「うん。だって伝えても、北山が困るだけだもん。」



『…』




その瞳が悲しそうに揺れて、黙り込む。


そんな顔しないで…


渉のおかげで、俺は自分の気持ちに向き合えたんだから。




「でもね、渉。」



『…ん？』




「俺…これからは北山と普通に話したい。」



『…』



「話の内容なんか何だって良いんだ。
最近何食べたーとか、どこ行ったーとか…」



『うん…』



「それでね、たまにふざけたりとかして…」



『うん…』



「顔見合わせて笑うんだ…」



『…っ…うん…』




真っ直ぐに見つめる瞳から、
俺の気持ちを丸ごと全部、受け止めようとしてくれてるのが伝わってくる。




「これが俺の…精一杯の我儘かな。」



ニッっと笑って見せると、目にいっぱいの涙を溜めた渉が同じように笑ってくれた。



『太輔なら出来るよ』



「そうかな…」



『絶対出来る。』




堪えきれなくなった涙が、渉の頬にぽろっと零れる。




「ふふ…どうして渉が泣くの？」



『ははっ…。そうだよね、
あれー？なんでだろ？？おかしいなー？？』



ゴシゴシ顔を拭きながら笑う不器用なその姿に、胸がじんわりあったかくなる。






ありがとう渉。




どんな時も変わらず、俺を信じてくれる君が傍にいたから


俺のために泣いてくれる君がいたから



俺は一歩、前へ進めるんだよ。






この先どんなことがあっても、君の存在が俺を強くしてくれる。


いつか俺も、


君にとってそんな存在になれたらいいな。





涙でぐしゃぐしゃになった渉の顔を見ながら、俺はそんなことを思っていた。




・・・

36→←34

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す