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数枚の絆創膏を右手にぎゅっと握りしめて、階段を駆け降りる。
何の根拠もないけど、まだすぐ近くにいるような気がした。
きっと、あそこだ_
息を切らして辿り着いたのは、前に北山と会った裏口の休憩所。
扉の前に立つと、ひとつ息を吐いて呼吸を整え、震える手でドアノブを握った。
ギギッと古びた音を立てて開く扉。
その奥には茜色に色づいた空と、探し求めた背中があった。
ドキドキと煩い心臓を抑えながら、ゆっくりと近付く。
その物音に気付いた北山が振り返って、驚いたように目を丸くして俺を見た。
「…おっ…お疲れ。」
『っ…おう…』
「…」
『…』
突然現れた俺に戸惑う北山。
なかなか次の言葉が出てこなくて、気まずい空気が流れる。
「…っ北山、……あの…さ…」
『……?』
困ったような、怯えるような北山の表情に、
弱気な自分が顔を出して今すぐにでも逃げ出したくなる。
心の中で先生の言葉をもう一度繰り返し、小さく息を吸う。
「………これ…ありがと…。」
振り絞るように放った言葉は少し震えていて、
握り締め過ぎた絆創膏はもはやクシャクシャになっていた。
そんな俺の様子をじっと見つめていた北山は、ふっと目線を下げると、そのまま黙って前へ向き直した。
沈みかけた太陽の色が、北山の髪や頬を染めてキラキラ光る。
あまりにも綺麗なその光景に、俺は息を飲んだ。
・・・
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mini7(プロフ) - み。さん» 嬉しいコメントありがとうございます!投票済と言われても、星を押して下さるその気持ちだけで、胸がいっぱいです(T_T)これからも楽しんでもらえるよう頑張ります! (2016年2月17日 0時) (レス) id: 7c7051b57e (このIDを非表示/違反報告)
み。(プロフ) - お話の書き方が物凄くお上手でとても面白いです!更新される度に星押してます!(投票済ですって毎回言われますが笑) (2016年2月16日 3時) (レス) id: f318d2817d (このIDを非表示/違反報告)
せり(プロフ) - mini7さん» 大丈夫ですよ〜♪藤北ちゃんはこうやって大きくなっていくんですから♪続き、まってます! (2016年2月5日 19時) (レス) id: 2f1917c8c0 (このIDを非表示/違反報告)
mini7(プロフ) - せりさん» せりさん、ありがとうございます!藤ヶ谷さんちょっと嫌な役回りをさせてしまっています…。ファンの方が気を悪くされないと良いのですが…汗(・_・; 今後ともよろしくお願いします! (2016年2月5日 14時) (レス) id: 7c7051b57e (このIDを非表示/違反報告)
せり(プロフ) - mini7さん» たいぴー、すごい発言でしたね…。みっくんとたいぴー、なかなおりはやくしてほしいです!続き、まってます! (2016年2月3日 20時) (レス) id: 2f1917c8c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mini7 | 作成日時:2016年1月27日 0時