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自宅へ向かうタクシーの中、ぼんやりと窓の外を見つめる。
_『太輔はもっと我儘になっていいんだよ。』
別れ際、渉は俺にそう言った。
我儘ってどういうこと…?
自分がどうしたいかも、もうわからないんだ。
窓の外では朝から降り続いた雨がますます勢いを増して、まるで全てを洗い流すかのようなその勢いに
“俺の気持ちも全部一緒に洗い流してくれればいいのに”
そんな祈りにも似た気持ちで静かに目を閉じた。
家に帰ると、ものすごい勢いで出迎えてくれる小さくて可愛い友人。
尻尾を千切れそうなくらいブンブン振って喜びを表す姿が、愛おしくて笑みがこぼれる。
「ただいま…ベル。」
フワフワの柔らかい身体を抱き上げて、部屋へ入る。
すると真っ先に目に入るのは、スタンドに立てられてピカピカ光る新品のギター
北山が俺にくれた、マーティンD-18。
吸い寄せられるように近づいて、綺麗な光沢をまとったそれを、そっと手に取った。
弦に触れると優しい音が部屋を包んで、
貝殻が埋め込まれたイニシャルを指でなぞるとキラッと、光った。
あの日、
北山からギターを貰った日、
ー“はい、コレ!”
そうぶっきらぼうに手渡した北山に、
俺はなかなか事態を飲み込めなくて
それなのに、俺がそれを手に取ると嬉しそうにはにかんで見せるから_
“あぁ…北山からのプレゼントなんだ”
ってわかって
俺は頬が緩むのを抑えるのが大変だったんだ。
_“みつ、ガヤとギター弾くの楽しみてたよ。”
今日のニカの言葉が頭をよぎって胸がズキッと痛む。
まだ慣れない手つきで弦を弾くと、
美しく力強い音色が部屋に響いた。
「_俺だって、楽しみにしてたよ…」
そう呟いた言葉は、行く当てもなく空気となって俺の胸を更に締め付けた。
嫉妬
寂しさ
怒り
悲しみ
後悔
色んな感情をぶつけるように夢中でギターを弾き続けた。
ふと気がついた時には夜明けと呼べるだけの明るさが、窓の外に広がっていて
「やば…今日仕事なんだっけ…?」
そう呟いたのも束の間、
ギターを抱いたまま倒れるようにして、
眠った。
・・・
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mini7(プロフ) - み。さん» 嬉しいコメントありがとうございます!投票済と言われても、星を押して下さるその気持ちだけで、胸がいっぱいです(T_T)これからも楽しんでもらえるよう頑張ります! (2016年2月17日 0時) (レス) id: 7c7051b57e (このIDを非表示/違反報告)
み。(プロフ) - お話の書き方が物凄くお上手でとても面白いです!更新される度に星押してます!(投票済ですって毎回言われますが笑) (2016年2月16日 3時) (レス) id: f318d2817d (このIDを非表示/違反報告)
せり(プロフ) - mini7さん» 大丈夫ですよ〜♪藤北ちゃんはこうやって大きくなっていくんですから♪続き、まってます! (2016年2月5日 19時) (レス) id: 2f1917c8c0 (このIDを非表示/違反報告)
mini7(プロフ) - せりさん» せりさん、ありがとうございます!藤ヶ谷さんちょっと嫌な役回りをさせてしまっています…。ファンの方が気を悪くされないと良いのですが…汗(・_・; 今後ともよろしくお願いします! (2016年2月5日 14時) (レス) id: 7c7051b57e (このIDを非表示/違反報告)
せり(プロフ) - mini7さん» たいぴー、すごい発言でしたね…。みっくんとたいぴー、なかなおりはやくしてほしいです!続き、まってます! (2016年2月3日 20時) (レス) id: 2f1917c8c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mini7 | 作成日時:2016年1月27日 0時