これが報いならば ページ44
息を切らしながら、Aは戦場を駆けた。頑張っても軽傷には見えない傷たちの悲鳴を無視しつつ、現在地を把握しようと頭のなかで地図を広げる。ゲートとは正反対の森の奥、ずいぶん走ったようだ。
長谷部さんたちは、もう本丸へ帰還できただろうか。
膨大な殺気を感じてとっさに前へ跳ぶと、さっきまで自分がいたところにものすごい勢いで敵が刃を薙ぐ。
Aは反転して相手の懐に飛び込んだ。一撃で仕留めるつもりで。しかし敵も弱くはない。無造作に振られた腕にあっけなく吹き飛ばされてしまう。
背中に鈍痛が走り低く悲鳴をあげるが、いつまでもこうしてはいられない。起き上がらなければ。次は袈裟斬りか、突きか。敵が右上に刃を構える。あれは──
｢──っ！？｣
突如、頭をかち割られたような痛みが走った。思わず視界が白く染まる。
｢──ぐ、っ……っ、しまっ、た……！｣
避けきれなかった。左の脇腹が燃えるように痛む。けれど、その傷の深さを確認している場合ではない。
もがくように地を蹴り、再びAは走った。
コポリと喉の奥が鳴り鼻につんと鉄の臭いがつく。懐を覗くと、自分の血で汚れ刀傷でぼろぼろになった主の人形。ああ、霊力が弱まるはずだ。
突然、がくりと膝が折れ、Aは地面へ転がった。視界がぼやける。脇腹の傷はそんなにも深かったのか。
影が降りる。見上げようとするが腕に力が入らない。顔を動かすと、案の定そこには検非違使が自分を見下げて刀を構えている。
逃げなきゃ。
…どうして？
全てがゆっくりだった。早まっていたのは己の思考のみだろう。
死ぬ覚悟はできていた。助けに向かったときから。囮を名乗り出たときから。
秋田さんに自分の御守りを渡したときから。
違う
本当は覚悟なんてできていない。
まだ死にたくない
愛染と、蛍と、皆と鬼ごっこをしたい
乱さんや厚さんたちに謝りたい
そして、また『兄さん』って……
｢……ああ……そうか……｣
これは罰なんだ
取り返しのつかないことをしてしまった罰
あの人の、未来を絶ってしまった……
そうか……
ふっと頭痛が遠退いた。傷の痛みも。周りの風景も、音も。
……なら仕方がないや
終わり
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aoi - とても面白くて好きです！良ければ更新してくださいませんか？ (3月19日 17時) (
レス) @page44 id: 91a548d4bc (このIDを非表示/違反報告)
凛音 - これで終わりなのが寂しいです。もし続きが書けるのであれば書いてほしいです！図々しくてごめんなさい。 (1月2日 12時) (レス) @page44 id: 0943923905 (このIDを非表示/違反報告)
pokopokopo77(プロフ) - 終わっちゃったんですかね…もしまだ続きがあったら読みたいです！ (2022年3月28日 12時) (レス) @page44 id: f4ea1f05f5 (このIDを非表示/違反報告)
花吹雪 流華 - 早く続きを見てみたい‥‥‥‥です！ｷﾗｷﾗ (2021年4月30日 23時) (レス) id: fd3650f0e7 (このIDを非表示/違反報告)
七夏(プロフ) - 面白いです!続きを楽しみに待ってます! (2021年3月30日 11時) (レス) id: 716685a2fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：のっと x他1人 | 作成日時：2017年3月8日 22時
