名前を呼ぶ声 ページ40
事態は最悪だった。
なんとか部隊はバラバラになっていないが、全員重傷。愛染や秋田などの短刀は破壊寸前。検非違使との戦闘は、明らかにこちらが不利だった。
「本丸への通信は?」
木の陰に隠れながら山姥切が問う。彼の背後には、荒々しく包帯を巻かれた秋田が横たわっている。
「相変わらず、こちらからは無理だ。だが、通信が切れたことで政府が状況を察するかもしれん」
同じく木の陰に隠れて長谷部が答える。彼は自身のシャツを破り、傷にあてがった。
敵来るよ!
高い声で蛍丸が叫ぶ。背後にはあの禍々しい気配が迫っていた。傷だらけの体を、動けない仲間を引きずり、それぞれは応戦しながら逃げていった。
戦うのも、本丸へ逃げるのも、もう限界だった。
もう、ここで立ち止まってやろうか。誰もがそう考え、いやいやと首を降る。
そのとき、愛染を背負っていた長谷部の背が強く押された。ドサッと重いものが落ちる音。
「何やってる!」
焦りと驚愕が混ざった顔で長谷部は落ちた愛染に手を差し伸べる。
しかし、愛染は無言でその手を払いのけた。
「行ってくれ、長谷部さん」
ニヤリと笑い長谷部に背を向ける。必然的に敵に向かい合う体勢となった。破壊寸前の震える手で自身を構える。
何度も何度も彼の名前を呼ぶ声がした。
愛染
やめろ愛染
お願い国俊、走って!
しかし彼が振り向くことはなかった。
‐
‐
「愛染……!」
高い声だった。蛍丸の声ではない。もっと高い、少女の声。
辺りが一瞬だけ静まった気がした。
刃と刃が交わる音が響く。
彼らの前に、黒い小さな影が立ちふさがった。
風にたなびく軍服。白い紐で結われたしなやかな黒髪。冷たく光る瞳。
「……A……?」
彼女の名前を誰かが呼んだ。Aは小さく頷き、目の前の敵を斬った。
「走ってください!」
彼女の声に弾かれるように彼らは走り出した。再び長谷部に担がれながら、愛染はAの姿を見た。
Aの目には、いつもと違う光があった。
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aoi - とても面白くて好きです!良ければ更新してくださいませんか? (3月19日 17時) (レス) @page44 id: 91a548d4bc (このIDを非表示/違反報告)
凛音 - これで終わりなのが寂しいです。もし続きが書けるのであれば書いてほしいです!図々しくてごめんなさい。 (1月2日 12時) (レス) @page44 id: 0943923905 (このIDを非表示/違反報告)
pokopokopo77(プロフ) - 終わっちゃったんですかね…もしまだ続きがあったら読みたいです! (2022年3月28日 12時) (レス) @page44 id: f4ea1f05f5 (このIDを非表示/違反報告)
花吹雪 流華 - 早く続きを見てみたい‥‥‥‥です!キラキラ (2021年4月30日 23時) (レス) id: fd3650f0e7 (このIDを非表示/違反報告)
七夏(プロフ) - 面白いです!続きを楽しみに待ってます! (2021年3月30日 11時) (レス) id: 716685a2fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のっと x他1人 | 作成日時:2017年3月8日 22時