空っぽ ページ29
夜、部屋に戻ろうと縁側をボクは歩いていた。涼しい夜風を全身で受けながら、綺麗な月明かりを眺めていた。
物音がして、急いで庭の方を見る。そいつもこちらを見ていた。
「乱さん……」
「無銘」
ボクが何かを言う前に、無銘はそろそろ後ずさっていく。
「……逃げるんだ」
そんな言葉が思わず口から飛び出る。無銘の動きが止まる。
「顔を見ただけで何にも言わずに逃げちゃうんだ。
そんなんでよく『藤四郎』を名乗ったな」
水が流れるように言葉が紡がれる。声が冷たくなってくのが容易に分かる。それでも無銘の表情は相変わらず無感情で温度すらなかった。
その態度が気に食わずボクは縁側を降り、庭に踏み込んだ。無銘の肩が僅かに跳ねる。
「お前が『藤四郎』の名を汚すんだ。そんな奴、兄弟と認めるわけがない。」
正直、何で怒っているのか分かんなかった。吉光様のことで嫌っているはずなのに、その怒りに中身がなくて空っぽのような感じ。それでも「怒らなきゃ」なんて声が聞こえてくる気がして、声を荒げる。
しかし、無銘は目の色を少しも変えることはなかった。
鈍い音と共に無銘の身体が吹き飛ぶ。自分の握った拳がジンジン痛んだ。
無銘が小さく呻く。立ち上がろうとすると頭を強く打ち付けたのか、ふらついて膝をついた。
無銘が落とした小さな紙を踏みつけ、無銘に近づく。踏みつけたとき無銘が目を見開いたような気がしたが、構わず胸ぐらを掴んだ。
「乱さ――」
「その口でボクの名前を呼ぶな！ お前が……お前がボクたちの笑顔を汚していくくせに！」
途端に無銘がうつむき頭を押さえた。さっきより呻き声が大きくなり、咳き込む。口にあてた手から漏れた何かがボタボタと地面に溜まっていく。
それは月明かりを赤く反射させた。
「乱兄さん？ ……無銘？」
縁側に一つの小さな影。
「平野……」
心配そうにこちらを見る平野に、無理矢理笑って見せる。
この中身のない笑顔も、さっきの空っぽな怒りも、もう嫌なんだよ……。
ラッキーカラー
あずきいろ
ラッキー食べ物
すし
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aoi - とても面白くて好きです！良ければ更新してくださいませんか？ (3月19日 17時) (
レス) @page44 id: 91a548d4bc (このIDを非表示/違反報告)
凛音 - これで終わりなのが寂しいです。もし続きが書けるのであれば書いてほしいです！図々しくてごめんなさい。 (1月2日 12時) (レス) @page44 id: 0943923905 (このIDを非表示/違反報告)
pokopokopo77(プロフ) - 終わっちゃったんですかね…もしまだ続きがあったら読みたいです！ (2022年3月28日 12時) (レス) @page44 id: f4ea1f05f5 (このIDを非表示/違反報告)
花吹雪 流華 - 早く続きを見てみたい‥‥‥‥です！ｷﾗｷﾗ (2021年4月30日 23時) (レス) id: fd3650f0e7 (このIDを非表示/違反報告)
七夏(プロフ) - 面白いです!続きを楽しみに待ってます! (2021年3月30日 11時) (レス) id: 716685a2fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：のっと x他1人 | 作成日時：2017年3月8日 22時
