＊story65 ページ16
わかってる、あれは確かに言いすぎた。
だけど、私はこの仕事を誰にも譲りたくない。
貴「眠い…」
筆を置いて、畳に仰向けになる。
貴「けど、あと少し…」
信「まだ起きていたのか？」
後ろを振り返ると、信春さんがいた。
貴「信春さん？珍しい…」
信「月見酒をしていたら、灯の付いている部屋を見つけたからな」
貴「飲み過ぎは良くないよ？」
信「ふはは！わかっている。…入ってもいいか？」
貴「どーぞ」
私は起き上がり、信春さんの方を向いて座る。
信「信玄が悔いていたぞ。きつく叱ってしまったと」
その言葉を聞いて、私は視線を下に向ける。
貴「なんで信玄さんが落ち込むの。悪いのは私なのに」
信「確かに、あの言い方はきつかったな」
貴「……」
信「…いつも、慣れない相手にはきつい言い方になるのか？」
貴「違う」
信春さんの問いに、私は即答した。
貴「あ、いや。まぁ最初の挨拶の時はなに言ったらいいかわからなくて…よろしくする気はない、なんて言ったけど…その…」
私の言葉の続きを待ってくれている。
貴「…私は、この仕事に誇りを持ってる」
ギュッと拳を握る。
貴「本当に…医学系は知識がないと危ないんだ。もし摘んできたのが毒草だったら？やり方次第で、効果が変わってしまう薬草だったら？摘む時に手を切ってしまったのが毒草なら、その毒素が体内に入るかもしれない。…本当に、色々危険があるんだ」
信「……」
貴「正直なところ、足手まといって気持ちもある。…けど、やっぱり私はこの仕事を誰にも譲りたくない」
信春さんを真っ直ぐ見て、私は続ける。
貴「夢を叶えさせてくれた武田軍のみんなのためにも、私はこの薬師という仕事を全うしたい。他の誰にも、手出しはさせたくない。私だけの仕事だ」
信「…そうか」
信春さんは、いつものようにクシャッと撫でてくれる。
信「あの言い方は、強い想いや責任感故に出た言葉なのだな」
貴「……」
信「安心しろ、お前は武田軍の誇る薬師。お前しか武田軍の薬師はありえないのだからな」
貴「！！」
信「夜も遅い。早く寝るんだぞ」
そう言って信春さんは部屋を出る。
貴「…そっか」
あの時悲しい気持ちになったのは、この仕事を結月ちゃんにやらせてもいいの？という、不安と嫉妬。
貴「…まだまだ弱いな、私」
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ふく - おかかさんのこのお話、大好きです。続きを本当に楽しみにしています。 (2020年3月5日 21時) (
レス) id: 61180c9817 (このIDを非表示/違反報告)
雪桜 - 小説消されると書くのが嫌になりますよねでも頑張ってください待っています (2018年10月30日 12時) (レス) id: 53aaf76c78 (このIDを非表示/違反報告)
サケ - 続き消されましたか？それでも頑張って下さい (2018年8月20日 0時) (レス) id: ced462d407 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - あの続編消されてしまったんですか？ (2018年8月14日 9時) (レス) id: 40a916232a (このIDを非表示/違反報告)
おかか(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです♪ただ今スランプのため…もう少々お待ちいただけると幸いです…！これからもこの作品をよろしくお願い致します！ (2018年2月28日 15時) (レス) id: 4fe1a36d40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おかか | 作成日時：2017年11月14日 15時
