ずっと魘されたいな ページ32
「…、いま何時、…う、う、」
鈍痛、心臓に呼応するような脳を締め付ける感覚。
同時に吐き気を催しそうな口の違和感に、背中を起こしかけてやめた。起き上がるのを体が拒否しているような、気がする。
顔だけをサイドボードに向けると、ストロー付きの蓋に変わっているスポーツドリンクと剥いてある梨、マスカット、丁寧に白い部分も剥いてあるみかん、そして濡らしたタオル。
首についたネックピローには、タオルにくるまった保冷剤。額には、熱を下げるシート。そして汗をかいた体を想定して、着替えが置いてあった。
こんなことをしてくれるのは、僕の知る限りたった1人だけ。
「…起きました？シュアオッパ、気分はどうですか？」
「……仕事、」
「スケジュールは代打で、ボノニが行ってます。…やっぱり覚えてないんだ」
「…え？」
「朝起こしに来たら、息も荒くて意識も朦朧としてたからスンチョリオッパと私が一緒に病院に行ったんですよ。ずっと魘されたように話してたけど、支離滅裂だったから危ないと思って…」
「…そうなんだ、…なにも覚えてない」
Aは、僕のネックピローとシートも替えてくれた。濡らしたタオルで上半身を拭いてくれるし、汗をかいた服から新しい服を着させてくれた。こんなお世話されて、恥ずかしいのに僕は力が入らないから抵抗もできない。
食欲がないなら、と甘いチューブのゼリーを飲ませてくれる。薬だって、辛いけどちゃんと飲んでね、と常温の水を渡してくれる。
「脱水症状で、熱中症の1歩手前まで我慢するなんて。管理だからって、ご飯食べないでお水ばかりで。栄養取らないからですよ？」
「…Aのスケジュール、」
「…シュアオッパが辛いのに、ひとりにするわけないでしょう？」
「……ごめんね、A」
「謝らないでください。あーあ、辛そう…熱下がるといいなぁ」
Aは、顔色が少し良くなったと僕の頬を撫でる。ぼーっとしたままの僕を、心配そうに見つめるその顔も半分はマスクで隠れているけれど。優しく笑ってくれているんだろうと、想像は容易い。
小さい頃、風邪を引いた日はお母さんがつきっきりで看病してくれた。それが嬉しくて、ずっとこのまま風邪を引いたらいいな、なんて思っていた。
僕が体調を口実にして、素直に甘えられる日だから。
「…A、フルーツ剥いてくれたの？」
「うん、食べる？」
「…食べさせてほしいな」
Aの嬉しそうな顔、いまだけは僕が独り占めしてる。
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＊ゆいな＊(プロフ) - 更新待ってました（ ; ; ）最高です！今まで読んできたお話の中で一番大好きで何度も何度も読み返しました！！更新もちゅんちゃんさんのペースで無理しないで下さいね(*^^*)いつも応援してます！大好きです！ (2021年6月12日 11時) (
レス) id: 805ae0b089 (このIDを非表示/違反報告)
フィガロ - 更新はもうしれないのでしょうか（ ; ; ）？ 突然更新が途切れてしまったので心配です…お知らせなどでもいいので何か報告待ってます(^^) お話の内容とっても好きです！更新も楽しみにしていますm(_ _)m (2021年5月19日 0時) (レス) id: 2c85f96aa8 (このIDを非表示/違反報告)
＊ゆいな＊(プロフ) - 久々の投稿ありがとうございます！！！！ハニオッパきゅんきゅんしました！！ (2021年3月30日 20時) (レス) id: 805ae0b089 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 更新待ってます！ (2021年3月5日 0時) (レス) id: 68c62b5d72 (このIDを非表示/違反報告)
さか(プロフ) - ふわふわした話だけじゃなくて、少し辛いお話が混ざってるのがとても好きです。でも、あまり過度ではなく直接的な痛い表現などは避けて書かれているのかなと伺えるので読んでいても辛い気持ちにはなりません。程よく読みやすくとても好きなお話です。 (2021年2月13日 6時) (レス) id: 4188621a8f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゅんちゃん | 作成日時：2020年11月27日 8時
