コード・ブルー ‐もう一人の医者‐ (ページ10)

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〔A〕

朝から熱中症患者が運ばれて来たと思ったら

高所転落の開放骨折が運ばれて来る。

相変わらず救命は初日から忙しい。

フェローをチラリと横目で見ていたけれど、

役に立っているようには見えない。

「あー、こりゃ血管傷ついてるな。
　お、A先生、血管縫合頼んでも良いですか。」

まさか今、呼ばれると思っていなかったが、

頼まれたものはさくっと終わらせよう。

一つ瞬きをして気持ちを切り替える。

『…はい。』

針と糸を受け取って素早く縫い上げる。

『…出血は見られない。』

「何回見ても早いな…よし、そんじゃ後は俺が。」

『お願いします。』

ふと、強い視線を感じて振り向くと

藍沢先生と目が合った。

何かしただろうか、と瞬きを一つする。

「藍沢先生、A先生が驚いてますよー。」

藤川先生がキラリと眼鏡を輝かせて茶化すと、

興味を失ったように彼は目線を患者さんへ移す。

ぱちりと瞬きを一つして、

こちらも気持ちを切り替えた――

―――――･･･････

朝のドタバタを乗り越えた後は

珍しくホットラインも鳴る事無く、

名取に連れられて食堂を歩いていた。

「で、此処が食堂。他にもコンビニあるから
　其処で買うも良し、此処で食べるも良し。」

『…ふうん。』

「相変わらず反応薄いなー。
　で？院内は殆ど覚えたんだろ？」

『まぁ、一通りは…前日にもさらっと見たから。』

嫌味か、なんて突っ込まれてしまったけれど、

此方としては本当の事なんだけど。

なんだか腑に落ちない。と目線で訴えていた時、

食堂の一角に青いスクラブの集団が居る。

「あ、名取…とA先生じゃん。こっち来る？」

「あー…じゃぁ、お邪魔します。」

回れ右して帰ろうとしたけれど、

あっさり名取に捕まえられて

結局皆さんと同じ席に着く事に。

「そう言えばさ、白石からA先生も
　同じ歳って聞いたんだけど。」

「お？んじゃAって呼んでいい感じか？」

『…あ、うん。』

名取はスマホを弄り始めてしまった。

二人の勢いにちょっとついて行けない。

おい、助けろ名取。

「所でさ、名取とAって知り合いな訳？」

『…まあ、小さい頃の知り合い…的な。』

「ふうん？家が近所だったとか？」

口下手なお陰でどう説明しようかと悩んでいたら、

スマホを見たままの名取が興味無さ気に話し出す。

「父親同士が知り合いで、
　会う事が多かっただけですよ。」