コード・ブルー ‐もう一人の医者‐ (ページ34)

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〔藍沢〕

患者を運ぶ足は止めず、呆然とする名取のシーバーを左手で半ば奪う様に取り上げて、鋭く聞き返した。

「藍沢だ、どうなってる。」

《藍沢先生…！崩れた足場にあった鉄板が、風で飛ばされて…A先生が、子供と救急隊員を庇って… 》

「患者は。」

《今の所問題ありませんが、今現場には医師が誰も…！》

「…白石、聞こえてるか。現場には俺が行く。」

《 …っ、聞こえてる。…藍沢先生、お願い。名取先生と現場に行って。患者はこっちで診る。》

「頼んだ、名取行くぞ。雪村、聞こえてたな。」

《は、はいっ。》

力強い目で頷いた名取を横目に、ヘリに向かって駆けた

ヘリに乗り込んでヘッドセットを着け、普段通りを心掛けていたつもりだった。対角に座っている名取が、じっと俺を見ているのに気付いて声を掛けるまでは。

「…なんだ。」

「あ、いや。藍沢先生はA…じゃなくて、A先生の事、凄く心配してるんだなぁって思って。」

あれ、違いました？なんて聞いてくる名取の食えない笑みも、今は何処か引き攣っていて。こいつはこいつなりに、普段通りを心掛けているのだろうか。

「…そういうお前は。」

「あー…俺は心配、ですよ。」

膝の上で固く手を握り締めている名取に、俺も右手の指を強く擦り合わせていた事に気付く。小さく息を吐いて、ここで心配していても仕方ないと気持ちを切り替える。

「まずは、Aの状態を確認する。その後は現場の状況と患者の状態によって指示を出す。」

「分かりました。」

現場まであと3分。

もうすぐヘリが到着する、そんな時だった。

神はいつも―――

―――俺達に試練を与える。