コード・ブルー ‐もう一人の医者‐ (ページ16)

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〔白石〕

Aが救命に来てくれて、
3日が経とうとしている今日。

橘先生の計らいで、この勤務が終わったら
私達の"行きつけの店"でちょっと遅い歓迎会。

あのお店、私は止めた方が良いって言ったんだけど、

どうしてもリアクションが見てみたい！

って藤川先生と緋山先生が譲らなかった。
なんでそういう所は意見合っちゃうのかなぁ…。

だけど、本音を言うと少しだけ見てみたい気もする。

楽しみなのは私だけじゃないみたいで、
いつもは絶対に手伝ったりしないのに、
緋山先生も藤川先生も、
お互いの仕事手伝ったりして、
フェローも引くくらい仲良く仕事してくれちゃって。

本当なら、いつもやって欲しいんだけどね…。

不意に、私の右斜め前でカルテを書いていた
A先生のPHSが鳴った。

『…はい。すぐ、行きます。』

ちらりと私を見て瞬きする。
これは"心外のコンサル"だ。

足音も小さく駆け出したA先生を見送っていると
横に腕を組んだ緋山先生がやって来た。

「なーんかさ、心外に呼ばれすぎじゃない？」

この女王様はAが心外にコンサルで
呼ばれる回数が多い事にご立腹な様だ。

「Aが凄いってのは分かるんだけど。
　いくらなんでも呼ばれすぎ。
　ってか、心外のナースに聞いたんだけどさ、
　呼ぶ必要の無いオペにまで呼ばれてるらしいよ？
　"素晴らしい技術を心外の医者に見て学んで欲しい"
　だってさ。ったく、救命の医者を
　コンサルで気安く呼ぶなっての。」

コンサルで呼ばれる回数が多いと思ったら
成る程、そんな理由だったのか。

「確かに、ちょっと多いよね…。」

「昼飯だっていつも例の10秒チャージだろ？
　あいつもほんと、タフだよなぁ。」

Aが勤務の終わりかけた午後ですら
病院内を走り回っている姿はよく目にする。
まだ来て3日目だって言うのに。

「じゃあ、橘先生に話してみるね。」

んじゃ頼んだ、と私の肩に一度手を置いて
緋山先生はICUを見に行った。
いってらっしゃい、と再び見送って
カルテを打つ手を再開させた。

暫くして、戻ってきたAは特に疲れた様子も無い。

「コンサル、お疲れ様。」

カルテを書こうとしているAに、
温めのコーヒーを手渡す。
名取先生を除いて、まだ私しか気づいていない事。

それは、Aは猫舌らしい事。
大抵淹れたてのコーヒーは、
少し覚ましてから飲んでいる。

ほら、ふーふーしてる。

私のちょっとした、優越感。