コード・ブルー ‐もう一人の医者‐ (ページ7)

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〔A〕

ふと気になっていた複数の視線の方を振り向いたら、
救命の先生4人が此方を見ていた。

瞬きを2つ。

振り向いた先ではかなり驚かれているけど、
いや、驚いたのはこっちの方だ。
まさかそんなに見られているなんて。

どうしたのだろうと瞬きすると、
ふわふわした髪の先生が眼鏡の先生を肘で突いた。

「え？！はっ？！いや、えーっと…。」

此方と突いた先生を交互に見てオロオロしている先生を
不思議に思って眺めていたら、
ふと横で腕を組んでいたあの彼と目が合った。

ぱちりと瞬きを一つ。

「橘先生とはどういう関係で、何故ＩＣＵにいた。」

怒っているのか、無表情な彼の言葉を反芻する。

『…橘先生から、聞いてない？』

「知らないから聞いている。」

…あ。
今から3日前、まだ海外(あっち)にいた時。
橘先生からメールが来ていた。

―サプラズだから、宜しく！―

考え込んで数秒。

『…ナイショ。』

――――――――――――――――――――――――――――
〔藍沢〕

何かを考え込むAに、俺はイラつき始めていた。
いい加減声を掛けようと息を吸った直後。

『…ナイショ。』

突然の事で全員が唖然として、あの緋山ですら
怒り出しもせず、完全に固まっている。

本人は俺達に背を向けると、オペ室を出て行った。

「ナイショって、言ったよね。」

白石が衝撃から立ち直ったのか
小さな声で緋山に話しかけている。

「本当にアイツが言った訳？」

「真顔だったけど、確かに言ってたな…」

緋山が調子を取り戻したらしく、
爛々と目を輝かせている。
相槌を打った藤川と目が合う。思う事は同じらしい。

あの目の時は下手に関わらない方が良い。

「橘先生は知ってるって事よね？行くよ、白石。」

「えっ、ちょっと待って…！」

連行されていく白石を白石と見送る。
ドンマイだなー白石の奴、
なんて呟いてる藤川が目を細めて一言。

「…触らぬ神に祟りなし、だな。」

「…同感だ。」

ほっと一息吐いた所で、遠くから聞こえた

「藤川ー！！あんたも来なさい！！！」

の声にひくり、と顔を引き攣らせた。

「頼む、聞こえなかった事にしてくれ。」

と頼む彼に9年で学んだ事を一つ。

「後が怖いぞ。」

と返して、嘆く藤川を背にオペ室を後にした。