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〔A〕
あの時、信じてもいない神様に願った。
運良く、スレスレで良いから当たるな、と。
居るのなら、どうか2人に当てないで下さい、と。
その願いは、聞き届けられなかった。
神様は、いつだって意地悪だ。
いや、神様なんて、いるのだろうか―――
覆いかぶさった布が纏わりついて、抜け出すのに苦労している2人の元に鉄の塊が向かうのが見えて。ここに医者は1人しか居ないという事も忘れ、患者を任せて飛び出していた。
滑りそうになる足で必死に地面を蹴って、呼吸すら止まる程、走った。必死に走りながら、漸く我に返って嗚呼これは確実に自分に当たるな、と頭の中のもう1人の自分が冷静に呟いた。
ゆっくりと迫り来る鉄の塊と2人の間に滑り込み、衝撃に備えた。
ちらりと布の合間から見えたのは、小さな瞳。
嗚呼、間に合ったんだ、と思う間もなく、体に凄まじい衝撃が走った。被害を確認する事無く、意識が飛んだ。
――――――――――………
ふと気がつけば、子供の泣き声がする。一体どうして泣いているんだろう、何処か怪我でもしたのだろうか。それとも、迷子だろうか。
何故か力の入らない体を不思議に思いながら、重たい瞼を持ち上げる。ぼんやりと白く霞んで、歪んだ世界の中で、1人の子供が泣いていた。
どうしたの、と声を掛けたつもりが声にならない。そこで、段々と思い出した。血の匂いがする。嗚呼、やっぱりぶつかったか。流れていく血液、冷えていく身体。そして薄れていく意識の中、泣かないで、と呟いて。
再び意識がブラックアウトした。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2019年8月30日 9時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
再びこなみ - 17 遥→はるか (2018年8月16日 9時) (携帯から) (レス) id: cb44cdb910 (このIDを非表示/違反報告)
こなみ - 8 遥→はるか (2018年8月16日 9時) (携帯から) (レス) id: cb44cdb910 (このIDを非表示/違反報告)
東雲 昴流(プロフ) - さくらさん» コメントありがとうございます!ふと思い出して書き始めたので遅くなってしまうかと思いますが、頑張ります…! (2018年7月28日 19時) (レス) id: ad54c4129e (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 続き楽しみにしております。 (2018年7月28日 17時) (レス) id: 15bef8530f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲 昴流 | 作成日時:2017年8月18日 1時