５７ ページ8
.
「ふはっ、その顔……何、拗ねてるの？」
「宮舘くんは優しすぎるよ」
さらに不機嫌そうにそう言えば、彼は笑顔をしぼませた。
「ホントに優しいだけだと思う？」
「え？」
すると、今度は私の両手首をガシッと掴んだ。
「このまま押し倒してもいいんだよ。ここ俺の家だし」
「…でも宮舘くんはそんな事しないでしょ」
そう笑ってみせると、彼は拍子抜けした顔をした。
また吹き出しケラケラ笑い出す。
「えぇ、このタイミングで初めての笑顔見せるんだ」
ゆっくりと手首から手を離すと、彼は諦めたように微笑む。
「しょうがないじゃん、大切だもんAの事。そんなの大切にしたいって思うでしょ」
彼の全てが優しくて、行き場のない気持ちがもどかしくなる。
「てかあれだね、ご褒美貰う前にやっちゃった」
完全に私から距離を離した宮舘くんが思い出したかのようにそう呟く。
ご褒美…ってあれか、リレーで一位とったらってやつ…
ボボボッと顔が熱くなり、隠すように俯く。
「っはは、これは変更じゃない？」
「え！？変えるの！？」
「俺と付き合って」
時が止まったようだった。
唖然とする私を他所に、彼は続ける。
「絶対一位取るから」
そう真剣な顔で言った宮舘くんに、混乱するしかなかったのだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 604人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ガム | 作成日時：2022年9月25日 15時
