cosmic is きらきら (ページ33)

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合わないピントの眼鏡越し(Lt.BLU) ページ33

盛り上がるでもなく、つまらなくもなく、
ただただ出演するバンドをぼーっと見ている。

中島くんのバンドまでもう少し

「A？」

「え、…」

元彼。

「こんなとこで何してんの」

「あ、えっと友達が…」

「へー、次の彼氏はバンドマンなんだ？」

「や、ちが、友達」

「いーっていーって！俺に気使わなくて！でもさ、Aもうかっこいい人とは付き合わないんじゃなかった？」

ドンドンドン、バスドラムの音がしてステージを振り返る。
中島くんがスティックをくるくると回して、
控え室でえずいてた明るい髪の男性はベンベンとベースを鳴らしていた。

いつまでたっても始まらない演奏。
会場もざわざわしてきた。

「新しい彼氏は何番目のバンドの人だったの？紹介してよ。かっこいいかかっこよくないか俺が判断してやるから」

「ちょっ、」

腕を掴む手が鬱陶しい。
どんなに振り払っても離してくれない。
もうほんといい加減にして。
私に構わないで！

ドンドンドドドン
キーン、、、

ハウリングで思わず耳を塞いだ。

「ねえ、そこのお兄さん。ナンパするのは別にいいんだけどさ、嫌がってるみたいだからやめてあげて」

間違いない。
有岡くんは私たちに向かって話してる。

「Aの彼氏って…」

「うちのドラムがだいぶご立腹だからそこんとこよろしく」

キラキラ笑顔のお兄さんこと、ボーカルの有岡くんはマイクを握り直してすぅと息を吐いた。

～～～♪
有岡くんのクリーンなボーカルから始まった曲は私の大好きなバンドの曲。

特徴的でいて聞きやすい歌声に心地よく響くリズム隊と重たいギターサウンド。

いつの間にか元彼の姿はなくなっていた。

.

私の好きなバンドのカバーを2曲、自分たちで作ったっていう曲を3曲。
それだけしっかり聞くと足早にライブハウスを後にした。

とにかく早く家に帰りたい。

だって、中島くんがすごくかっこよくて息が詰まって酔いそうだったから。

真剣な顔も楽しそうな顔も、
最後私に向かって綺麗に微笑んだ顔も。

この時間まで人通りの絶えない河原町通りを上がる。

ぼーっと1駅分歩いてしまった…
でもこうすれば乗り換えなくて済むしって言い訳を付け加えて。
三条大橋のコーヒーショップを見送ってそのまま橋を渡る。

ポケットの音楽プレイヤーに手を伸ばしたけど
なんとなく聞く気になれなくてそのまましまいこんだ。