いいわけ姫(RED) ページ24
目が覚めた時だって『遅れる！』としか連絡してない。
どれくらい遅れそうだとも伝えずに、
それでもデートだから涼介に会えるからって髪の毛のセットもメイクもいつも通りに時間かけてた。
第一声も『どーする？』だし、一言も謝ってない。
ただ仕事遅かったんだよねって言い訳だけ…
いつ仕事が終わるか分からないっていうこの女性の気持ちが涼介には分かるんだよね。
時間潰すにしても、相手のことを考えたら退屈しのぎの買い物も集中してできない。
みたいなことさっき言ってたもん。
そうだよね、私が悪いんだ…
でもでもだって、それにしたってこの人と一緒に待つことないじゃん！
私が言ったことは間違ってないもん！
キっと顔を上げる。
「でもその話とこのことは今関係ないじゃん！私と予定があるのに『ないです』みたいにかっこつけちゃってさ！その人も言ってたけど、普通は私優先なんじゃないの？！私だけ見て！！久々のデートだよ？私楽しみにしてたんだよ？なんで私に優しくしてくれないの？」
可愛さのかけらもない。
私から可愛さを取り上げたら何も残らないじゃん…
「Aはそんなに楽しみだったデートに遅れてくるんだな。今素直に謝ったら許そうと思ってたのに」
やってしまった。
歩行者信号が青に変わった瞬間に私は走り出した。
「待って！」
改札でもたついていると私の肩を掴んだのは涼介じゃなくてあの女性だった。
「巻き込んでごめんね。彼女さんが帰ることないじゃん、私が帰るよ。山田くんは優しいから…」
「分かってます！」
涼介が優しいなんてあなたより分かってますから。
一緒に待っていようっていう提案も涼介の優しさだし。
でも…その優しさを今は私だけに向けて欲しかっただけだもん。
「帰ります。あなたは涼介と一緒に待ってればいいでしょ？もうほっといて」
「違うよ。山田くんは私じゃなくてあなたを待ってるんだよ？ね、一緒に戻って謝ろ？」
優しく優しく微笑まれて…
自分の自己中さと、目の前にある笑顔に嫌気がさして女性を突き飛ばした。
『一緒に謝ろう』？
吐き気がする。
「A！何やってんだよ！大丈夫ですか？怪我してませんか？」
「大丈夫！それよりも、彼女さんを…」
「私悪くないもん…」
「A、」
「悪くない！」
涼介も振り切って駅に逃げ込んだ。
タイミングよく電車が到着。
終わった、完全に終わった。
後ろを振り返っても涼介は追いかけてくるはずもない。
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作者名：もぶ | 作成日時：2017年1月24日 15時
