ジャスライク プリンス(PNK) ページ21
「涼介、やっと1番大事に気づいたんだってさ。それって誰のことだろうね」
知念くんはそう零すと私の腕を掴んだ。
「涼介のジュリエットは君みたい」
「知念くん…」
「もっと自信持ちなさいよ、Aは黙って笑ってたら可愛いんだから。涼介のバイト先まで一緒に行ってあげる」
え待って、ちょっと待ってよ、待ってってば。
私は知念くんの手を振り払った。
今こんなに悲しい気持ちなの、気づいて。
涼介と夕紀が付き合った時より悲しいし辛い。
「私が涼介の、ジュリエット？それじゃあ私のロミオは…王子様はどうなるの？もう王子様とは結ばれないの？」
「A、の？」
「私の王子様は違う、涼介じゃない」
こんな人通りの多い所でなに泣いてだよ私。
ロミオだのジュリエットだの、王子様だのお姫様だのって言って知念くん困らせて泣いてるなんてあほらしい。
ん？いや、最初に言い出したのは知念くんじゃん、私悪くないじゃん。
そーだそーだ！こうなってしまった当事者が責任取ってよ。
大阪旅行から、ずっとずっと、私は君しか見てない。
涼介に何年片思いしてたか忘れたけど、それを君はたったの1泊2日で塗り替えた。
こっちは涼介のことなんてとうに諦めてんの。
どうぞ夕紀とお幸せに、な気分になれてたんだよ。
それを今さらクーリングオフ制度がありますよってな感じで勝手にお姫様に仕立てあげられたって困る。
「知念くんのジュリエットはどこにいるの？」
「僕の？」
「うん。私は涼介じゃなくて知念くんのが知りたい」
知念くんは黙って足元を見た。
好きな子、いるのかな。
「せっかく知念くんがクレープ買いに来てくれてバイト終わるのも待っててくれて…すっごいすっごい嬉しかったのにさ、舞い上がってたのにさ。なんで涼介のとこ行かなきゃいけないの？」
「それは…Aを涼介のとこなんかに行かせたくないからだよ」
今度は腕じゃなくて手を掴まれた…いや、そのまま絡めとられて恋人繋ぎになった。
「涼介じゃなくて僕にしなよって、道中で説得しようとしてた」
え。
でももうその必要ないみたいね、ってそのままメトロには降りずに歩き出す。
それが王子様にエスコートされてるみたいで…
目に写真アプリみたいなフィルターがかかったのかな、一瞬にして周りがきらきら煌めいた。
「あーあ、なんかAに先越された気分。悔しいからこのままデートね」
まだ帰りたくない、私の我儘を叶えてくれる王子様。
End
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作者名：もぶ | 作成日時：2017年1月24日 15時
