【銀魂】今日もお江戸は平和です ４

第百五十五訓 ページ13

沖田side



昨夜からAさんの姿が見当たらない。



折角、一ヶ月前に提出する予定だった書類を真面目にやって持って来てやったのに部屋にAさんは居なかった。他の奴等に聞いても知らないの一点張りで、どいつもこいつも役に立たない。


昨日の夜、偶々聞いた伊東の告白。


あの時最後までその場にいれば何か変わっていたかも知れないが、後悔しても今更だろう。


…Aさんと最後に話したのはおそらく伊東だ。

そして、隊士募集を目的とした武州へ向かう列車の中で近藤さんと同じ車両に乗っているのも伊東。しかも列車には伊東の側に付いてる連中ばかり乗っている。


妙な胸騒ぎがするのは必然的で、頼まれた列車の見張りそっちのけで近藤さんの様子を見に行けば、近藤さんを取り囲み刀を向けている同じ制服を着た奴等。


勿論、その場には伊東もいる。


副長の座をくれると言われた時、コイツの目的は近藤さんを殺し自分がその地位に上ろうとすることだと思っていたが、目の前の光景を見て確信に変わる。


先程近寄って来た奴を斬ったせいで俺を敵だと認識したのか、俺を殺さんばかりに殺気立つ空間。



伊東「なるほど、やはり君は土方派…土方を裏切ったのも僕を欺く為の芝居だったか」

沖田「芝居じゃねーよ。俺の眼中にあるのは副長の座だけだ。邪魔な奴は誰だろうと叩き潰す。俺の大将はただ一人…そこをどけ。近藤(そこ)の隣は副長(おれ)の席だァ」



目の前で何食わぬ顔する奴に怒りを募らせつつ「その人だけじゃねェ」と、思ったよりも自分の声が低く聞こえたが、構わず続ける。



沖田「…Aさんを何処に隠しやがった」

伊東「さあ、知らないな。それより…先ず君は人の事よりも自分の心配をした方が良い」



怪しさ満点でシラを切った伊東と、鞘から刀を抜き出したその仲間達。見知った顔もいくつかあるが、こちらに向ける目は皆一様に同じで、鏡で見て来て欲しいくらいだ。


屯所内と列車の先頭からこの車両までの間に彼女は居なかったのだから、いるとすれば伊東の後ろに続く車両のどこかだろう。


邪魔な敵を粛清し、近藤さんをこの場から離れさせ、プラスAさんも見つけ出さなければいけないとなると、かなりの重労働になる。


どうして俺の上にいる連中は世話のかかる人ばかりなのだろう。零した溜め息は、俺が取り付けておいた爆弾の爆ぜる音で掻き消されたのだった。



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