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第百五十四訓 ページ12

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あれから音沙汰なかったものだから、てっきり忘れているのかと思ったけれど、彼はきちんと覚えていたらしい。ご丁寧に名前呼びを、しかも苗字ではなく名前の方で。デキる男というのは、つくづく恐ろしい。


沈黙、というのは長く続けば続くほど気まずさを増していくので、あまり時間を溜め込ませずに答える。


「…私も、伊東さんのこと好きですよ」と。


予想していなかった言葉だったのか、それともこれは冗談で、私が真面目に返したものだから引いてしまったのか。彼の顔を見るに、恐らく前者だろう。


そんな所申し訳ないが「でも…」と付け足し、頰に触れている手から離れるように体を少し後ろにずらして立ち上がる。



「…でも、ごめんなさい。私、裏でコソコソ企んでいる策士よりも、バカ真面目で瞳孔開き気味のヘタレの方が好きなんです」

伊東「……裏で?君は何の話を、」

「あら、私が何も知らないとお思いで?」



目を細めて答えれば、誰を想像したが知らないが顔を歪めた後、私の言葉の意図が分からないといった顔で聞き返してくる伊東さん。

あくまで、シラを切るつもりらしい。



「私がただの酒好きで、何も知らない、そんな能天気な女だって思ってました?……貴方って、」



瞬間、視界がグラりと揺れた。


話の途中ということもあり体が追いつけず、近くの柱に倒れ掛かる。尚も不安定な視界に加え、凄まじい眠気も混ざって。明らかな体の異変に対し最早顔は笑っているが、全然笑える状況ではない。



「あ、れ…」

伊東「…残念だよ。君とは上手くやっていけると思ったんだが」

「…フラれた、腹…いせ、ですか……性格、悪っ…」

伊東「生憎、僕はそんな面倒臭い男じゃないよ」



人の様子がおかしくなっているというのに、顔色一つ変えない彼は私をこんな風にした張本人なのだろう。


寄りかかった姿勢からドサッと廊下に倒れこむ。口を動かすことも出来ず、どんどん回らなくなる頭ではこの状況の打開策も考えられない。


視界の端ではいつの間にか私を見下ろす形で伊東さんが立ち上がっていた。その後ろには何人かの人影が薄っすらと見え、不敵に笑って話す彼の声はなんだか遠くて、聞き取れなかった。



伊東「安心してくれ、何も取って食う訳じゃない。君には事が済むまで眠ってもらうだけだ……後は頼んだよ。彼女を列車へ__」



その後の記憶はない。



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設定タグ:銀魂 , 原作沿い , 逆ハー   
作品ジャンル:アニメ
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ばる - 更新ありがとうございます(o^^o)短編集も見てみます!応援しています(*^_^*) (2019年10月23日 21時) (レス) id: a4bb1cfb64 (このIDを非表示/違反報告)
ばる - 柊ひなさん» なぜか全く身に覚えのない\マークが入ってしまいました…。なんの意味もないのでスルーしてください(T_T) (2019年9月12日 14時) (レス) id: a4bb1cfb64 (このIDを非表示/違反報告)
ばる - 柊ひなさん» わー!返信頂けると思っていなかったので凄く嬉しいです\(( °ω° ))/申し訳ないことなんてないですよ!柊ひなさんの気が向いたときにでも更新してくだされば私がめちゃめちゃ喜びます\( 'ω')/これからも応援していきますね!! (2019年9月12日 14時) (レス) id: a4bb1cfb64 (このIDを非表示/違反報告)
柊ひな(プロフ) - ばるさん» んんん〜〜!!とっても温かい感想ありがとうございます!!自分の妄想を爆発させただけの作品で喜んでくれる方がいるなんて本当に嬉しいです。週一更新を目指しているのですがなかなか出来ず申し訳ない。。。あー引きこもってたい!! (2019年9月11日 23時) (レス) id: 68ffe842de (このIDを非表示/違反報告)
ばる - はじめまして(*^^*)柊ひなさんの小説、原作に忠実かつ主人公が浮いていなくて最初から最新話まで何回も読み返ししているくらい大好きです(o^^o)これからも柊ひなさんのペースでの更新、楽しみにしていますo(^▽^)o (2019年9月6日 22時) (レス) id: a4bb1cfb64 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柊ひな | 作成日時:2019年7月15日 15時

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