第六訓 ページ7
.
「…オイ、お前こんなとこで何してんだ」
「何って、カツ丼食べてるんですけど」
「昼から見廻りだろお前」
「…お前お前うるせーな。これ食べ終わったら行く所です。せっかちなとこ直した方が良いですよ」
「土方さんは怒らすと後で面倒でさァ。ここは黙って行くフリして戻ってくりゃァいいんでィ」
「天才か」
「天才か、じゃねーんだよ!早く行ってこい!!総悟!お前は書類とっとと出せ!!」
怒鳴る土方さんの声を左から右に聞き流す。自発的にやるのはいいのだが、誰かに命令されてやるのは気分乗らない。況してや、土方さんの命令。
が、これ以上突っかかるととてもとても面倒臭い事になるので、ここらで素直に従うのがポイントだ。
__ムカつく位に清々しい、青い空。
賑わっている商店街。
うん、平和だ。ザ・日常って感じ。
寝ぼけた事を思いつつぶらぶら歩いていると、駄菓子屋の前でジッと一点を見続けて座っている番傘を差した女の子がいた。
それとなく通り過ぎようとしたが、微動だにしない姿はもはや狂気的で、思わず声を掛けてしまった。
「…何見てるの?」
「酢昆布」
「……見てるだけ?買わないの?」
「私の家、万年金欠ネ。酢昆布買うどころか水道代も止まりそうヨ」
今時こんな貧しい子が江戸にいるなんて思いもしなかった。そんなに切羽詰まっているだなんて…だからこんなに色白で細いのだろうか。
…気付いた時には、駄菓子屋にあった酢昆布を買い占めていた。もちろん私が。
それに酢昆布全部買った所で大したお金にはならないし、問題はない。この子の前では言えないが。
「はい、あげる」
「え…いいアルか?」
「そのために買ったんだよ。私、酢昆布好きじゃないから…グェッ、」
「ありがとネ!!オネーサン命の恩人ヨ!!名前なんて言うアルか?私、神楽ネ!!」
「A、です……中嶌、A…」
酢昆布を渡した途端抱きつかれたと思ったら、その余りの力の強さにカツ丼どころか内臓までぶちまけかけて、意図せずカエルの潰れたような声が漏れる。
可愛い顔して恐ろしいなこの子。
「…もしかしてAってヅラと一緒にいた時、追いかけてきた人?」
「ヅラ?は知らないけど…多分そうじゃないかな」
適当過ぎる返事にも関わらず、見たことある別嬪さんだと思った、と目をキラキラさせながら呟く神楽ちゃん。
確か、池田屋事件の時にいた白髪頭を吹っ飛ばしてた怪力娘の筈だ。
.
758人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柊ひな(プロフ) - サヤ&アキさん» 紅桜篇は書いてません!書く予定もないです。紅桜篇で真選組が登場するのは劇場版で、中嶌単体で出す案も考えたのですが無理矢理感が出ると思いやめました。吉原炎上篇も同じ理由で書く予定はなかったのですが書かないと新キャラ二人の出る機会がないと思い書きました。 (2021年3月3日 11時) (レス) id: 7c8f4bb7ef (このIDを非表示/違反報告)
サヤ&アキ - 紅桜編ってどこですか? (2021年3月3日 0時) (レス) id: a63af908e0 (このIDを非表示/違反報告)
柊ひな(プロフ) - 黒華さん» 私の紛らわしい言い方で気を遣わせてしまいすみません…不快だなんて全く思ってないです!わざわざ応援までありがとうございます(泣) 更新頑張ります! (2020年5月20日 17時) (レス) id: 3fe6b67371 (このIDを非表示/違反報告)
黒華(プロフ) - この間のコメントに不快を感じさせてしまっていたらすみませんm(*_ _)m物語シリーズを作者様が知っていたことが嬉しくて『おぉ!!』って思ったんです。銀魂な感じが出ている作風でとても好きです!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2020年5月20日 15時) (レス) id: 0ab52dedef (このIDを非表示/違反報告)
柊ひな(プロフ) - 黒華さん» そりゃ丸パクリして使われてたらゾワッてしますよね…笑 (2020年5月20日 15時) (レス) id: 3fe6b67371 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:柊ひな | 作成日時:2019年4月6日 23時