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「あかんわー、遅れてまう!」

 元気よくそう言った彼は、あわただしく椅子から立ち上がった。勢いをつけすぎてスーツがイスの背もたれに引っかかって、おうっ!と言いながらたたらを踏んだ。私は思わず手を伸ばした。押しの顔に傷がつくとか、ファンとしては絶対に嫌だ。

「簓さん、手ぇっ!」
「おんっ!」

 思いっきり声をあげながら手を出すと、簓さんはすべる足でバランスを取りながら手を取ってきた。よし、掴んだ!ググッと、そのまま態勢を整えた簓さんは額に汗を垂らしながら立った。

「ふぅ〜……冷や冷やしたわ。はぁ、まいった、まいった」
「……こっちの台詞です。きれいな顔に傷がついたらどうするんですか!」

 頭を掻きながら、笑い話にしようとする彼を見て、軽く腹が立った。へらへらしているところは可愛いが、顔が出る職業なのだ。何より、その綺麗な顔に傷がついてほしくない。

「ご、ごめんって。そないに怒らんとって?」

 胸元で両手を合わせ、な?と念押しをする。どうやら、私がどうして怒っているのかをあまり理解できていないらしい。だが、その理由を話してしまうと調子に乗るだろうから言わない。

「ほらほら、番組まで時間がないんですよね。帰ってください。あと、今後うちに来ないでくださいね」
「え、ちょ、怒っとんの?」
「怒ってないですよ。ほら、早く出てください」
「怒っとんの?自分に変な印象もたれとるとか嫌やわー」

 急に焦りだした簓さんがなんだか面白い。来ているスーツがいつものオーダーメイド品だった為か、コミカルに見える。
 そのうち本当に時間がヤバくなった簓さんは、帰り際にうちの玄関から顔をのぞかせ……。

「ホンマに怒っとらんの?」
「お、怒ってませんから、そんなかわいい子としないで帰ってください!白膠木簓ってバレないようにしてくださいね」

 あまりにもその様子が可愛くて、私は上がりすぎた口角を手で隠しながら、もう片方の手でぽいぽいっとした。簓さんは何度かひょこひょこと扉から顔を出すと、また来るで!と言って帰っていった。
 ……引っ越し、しようかな。

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一期Love(プロフ) - 簓推しなのでこの小説見つけてテンション上がっちゃいました笑私関西人なんですけど関西弁もあんまり違和感ないしキャラも上手く表現?されててスゴイなー!って思いました!これからも頑張ってください。更新待ってマス!! (2019年10月21日 21時) (レス) id: 2345a9075e (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - レインさん» 誤植の指摘、ありがとうございます。すぐに確認させていただきますね。 (2019年10月10日 14時) (レス) id: d839c37112 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 上層じゃなくて女装じゃないですか?間違ってたらすみません! (2019年10月9日 16時) (レス) id: a7f544d6f5 (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - リつきさん» 有難うございます。楽しんでいただけて幸いです。キュンキュン、してますかね?? (2019年10月5日 21時) (レス) id: d839c37112 (このIDを非表示/違反報告)
リつき - とても良かったです!めっちゃキュンキュンしました!!!素敵な作品ありがとうございます!続き楽しみにしてます♪ (2019年10月5日 20時) (レス) id: 4bdd39adda (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:高炉 | 作成日時:2019年10月2日 0時

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