検索窓
今日:2 hit、昨日:19 hit、合計:61,979 hit

改めまして、#001 ページ8

-

「なぁなぁ、そないにむくれんとってや―」

 私が朝食を食べ終わり、休日にどうやって羽を伸ばそうかと思案しているときに彼はやって来た。
 私が住んでいるアパートにはインターホンなどない。そんな中央区並みの管理が整ったアパートメントに住む金などないからだ。防犯管理が甘いのも、私はそんな勘違いを起こせるほど美人ではないし、うちのディビジョンは治安が良い方だからと安心していた。故に今回、侵入を許してしまったのは、覗き穴をろくに確認せずに扉を開けた私のせいだと言える。まさか、自分が不法侵入をうけるとは思ってもみなかった。

「何しに来てるんですか」
「なにって……彼女さんのおうちに来ただけやけど?」

 目の前で私の湯飲みでお茶を飲んでいるのは、高校生のときから推している芸人・白膠木簓だ。帽子を目深にかぶり、少し大きめのサングラスをかけた見た目不審者は、当たり前のように家へとやって来た。
 私は両手で持っていたカップを一旦机の上に置き、眉間に手を当てた。自然とため息を漏らす。

「だぁかーらー!彼女じゃありません。大体、こんな所でフラフラしていて良いんですか?今日はクイズ番組の生放送に出るって投稿してましたよね」
「やっぱ、「雪見大福」ってアカウントは、宮垣Aチャンやったか」
「人の質問に答えてください。あと、人のアカウントを特定しようとしないでください」

 何で知ってるんですか、と半眼で睨みながらココアを飲めば、彼はきょとんとした顔をした。まじまじと私の顔を見つめる。……急に、黙って見つめるな。

「覚えとらんの?自分が教えてくれたんやで」
「何を」
「私の好物は雪見大福です。って」
「嘘」
「嘘やない」

 覚えが全くないわけではない。毎週ファンレターなんか送ってたら、ポロっとどうでもいいことを書いてしまうかもしれない。でも、基本は彼を応援する文章ばかりを書いていたはずだ。

「あ、ちゃうちゃう」

 私の目の前で、指を滑らせて携帯の画面をタップしていた彼が声をあげた。何かをチェックしているようだ。興味をそそられて、首をほんの少しだけ伸ばすと、彼は口元に人差し指を持ってきて茶目っ気たっぷりに笑って見せた。

「だーめや。流石に、未来の嫁さんかて見せられん」
「うぐっ……い、いや。嫁じゃないですから」

 そのポーズのあまりの可愛さに、胸を押さえながら私はそう返した。

「な、どしたん?心臓、痛いんか?」
「……精神的に」
「なんやそれ」

-

・→←#00



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (97 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
254人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

一期Love(プロフ) - 簓推しなのでこの小説見つけてテンション上がっちゃいました笑私関西人なんですけど関西弁もあんまり違和感ないしキャラも上手く表現?されててスゴイなー!って思いました!これからも頑張ってください。更新待ってマス!! (2019年10月21日 21時) (レス) id: 2345a9075e (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - レインさん» 誤植の指摘、ありがとうございます。すぐに確認させていただきますね。 (2019年10月10日 14時) (レス) id: d839c37112 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 上層じゃなくて女装じゃないですか?間違ってたらすみません! (2019年10月9日 16時) (レス) id: a7f544d6f5 (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - リつきさん» 有難うございます。楽しんでいただけて幸いです。キュンキュン、してますかね?? (2019年10月5日 21時) (レス) id: d839c37112 (このIDを非表示/違反報告)
リつき - とても良かったです!めっちゃキュンキュンしました!!!素敵な作品ありがとうございます!続き楽しみにしてます♪ (2019年10月5日 20時) (レス) id: 4bdd39adda (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:高炉 | 作成日時:2019年10月2日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。