浮気疑惑 ページ11
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なんだかこの光景に「慣れ」が生じてきてしまった気がする。
私の目の前ではカーペットの上で勝手知ったる部屋とごろごろしている白膠木簓だ。もう、テレビや雑誌、劇場で見る白膠木簓という人物と、目の前のごろごろ簓を別人のように扱っている自分がいる。
「あ、帰ってきたん?シャワー借りたで」
バスタオルを頭からすっぽりとかぶり、Tシャツに下はスウェットという姿で小説を読んでいた彼が顔をあげた。
「……合鍵、渡さなければよかった」
「えーやろ?自分、部屋の前でずっと待っとったら迷惑って言ってたやろ」
ふふん、となぜか自慢げにいう彼を見て、自然とため息が漏れた。
以前、私が残業で遅くなった日。アパートの部屋の前で体育座りで待っていた彼を見て度肝を抜かれた。あまりにもビックリして、大声で怒鳴ってしまったほどだ。すると彼は鼻の上を紅くして、ブイサインをして見せた。一言、「出待ちや」と。ふざけるな、出待ちは私の仕事だ。と怒鳴りながら部屋へと引っ張り、正座させて説教した。そしていつの間にか説教していたはずの私は言いくるめられ、合鍵をわたす羽目になっていた。
しかし目の前の白膠木簓はどこの雑誌の写真ですか。あなた本当に職業は芸人ですか?と聞きたくなるくらいかっこいい。どこで買ってきたのか、上から着ているTシャツの襟元から鎖骨がちらちらと見えている。職業なんだよ、本当に。
私は近くに落ちていたブランケットを彼に向かって投げた。
「……〜これでも被っとけ!エセ芸人が!」
「ふぇっ!?Aチャン、急にどうしたん。てか、エセ芸人ちゃう!」
飛んできたブランケットがバスタオルを巻き込み、彼の顔を押し倒すようにして壁へ激突する。鈍い音がして、彼はもしゃもしゃとブランケットとバスタオルをかき分けるようにして顔を出した。
「ちょ、もう何してくれとんの?自分じゃなかったら、どついとるで?」
頭を押さえながら、こちらを睨んでいる。目じりに若干、涙がにじんでいる。
「白膠木簓がこんなに格好いいのがいけないっ!」
「……ほんまに、かなわんや」
持っていた仕事用の鞄と本屋の袋を抱きしめた。くふぅ〜、急にこういう可愛い顔をするから、この人の推しはやめられない。ブランケットとバスタオルを床に置き、なんやねんと言いながら彼は立ち上がった。
「って、白膠木さん何ですかそのTシャツ」
「ん?ええやろ。『アルミ缶の上にあるミカン』Tシャツ」
「え、ださ」
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一期Love(プロフ) - 簓推しなのでこの小説見つけてテンション上がっちゃいました笑私関西人なんですけど関西弁もあんまり違和感ないしキャラも上手く表現?されててスゴイなー!って思いました!これからも頑張ってください。更新待ってマス!! (2019年10月21日 21時) (レス) id: 2345a9075e (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - レインさん» 誤植の指摘、ありがとうございます。すぐに確認させていただきますね。 (2019年10月10日 14時) (レス) id: d839c37112 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 上層じゃなくて女装じゃないですか?間違ってたらすみません! (2019年10月9日 16時) (レス) id: a7f544d6f5 (このIDを非表示/違反報告)
高炉 - リつきさん» 有難うございます。楽しんでいただけて幸いです。キュンキュン、してますかね?? (2019年10月5日 21時) (レス) id: d839c37112 (このIDを非表示/違反報告)
リつき - とても良かったです!めっちゃキュンキュンしました!!!素敵な作品ありがとうございます!続き楽しみにしてます♪ (2019年10月5日 20時) (レス) id: 4bdd39adda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:高炉 | 作成日時:2019年10月2日 0時