この手に余る幸せを【約ネバ/短編集】

お前とあいつは違う【レイ】(菫の花) ページ24

【著作：菫の花】



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｢うっ…ひぐっ、う、ぁ……｣


深い深い森の奥、よく聞き覚えのある泣き声が俺の耳に届いた。

自然と俺の足は泣き声の元へと向かっていく。



｢やっぱりか…｣



そして、泣き声の本人が視界に入ると俺は微かに眉を寄せ、木の根元に体を抱き締めるようにして座るAの隣へ歩み寄り腰を下ろす。

座ると同時にかさっと鳴った音にピクっと耳を動かしたAだが泣き止む事は無い。


まぁ、いっつもこいつが泣いてる時の居場所は俺しか知らないしな…


何時も慰めてるわけだし分かってるんだろうな、と思いつつ俺は口を開く。


｢どうした？今度は何があったんだ？｣


絹の様に細くとても真っ白で太陽の光をキラキラと反射させる綺麗な髪に優しく手を置くと

Aはしゃくりあげながらも顔をあげずに答える。



｢…ラニとトーマにね、お前とお兄ちゃん全然違うなって言われたの。

悪気が無いのも知ってるしただ単純に思ったことを言ったのも知ってる。本当の事だし。


でも、比べられてるみたいでやだよ。みんないっつもそういうんだよ｣



その言葉に俺はすぐ理解した。確かにこいつの兄は火の打ち所がない…完璧と言っても違和感なんて1つもないし、顔も良くて頭も良い。

でも、Aは…
余り言いたくないんだが顔は可愛いよりは平凡で頭も余り良くない。


｢別にお兄ちゃんが嫌いだとか恨めしいとかそういうのは無いよ…でも悲しいよ｣


ひくっと小さくしゃくりあげようやく顔を上げたAの顔は涙や鼻水でぐしゃぐしゃ。

本当に女の顔か、って疑うほど泣いてしまい目は赤く腫れ…肌が白い為か余計に目立って居るし綺麗な前髪も崩れている。


潤んだ宝石のサファイアの様な透き通る青い瞳が俺を映す。

はぁっと小さく溜息を漏らした俺はそんなAのほそっこい腕を掴み抱き寄せた。



｢俺はそうは思わねぇよ。お前はお前で努力してるし、十分だろ。

そう言う所がお前のいい所なんだ、俺はAのそこが好きだ｣



2度、優しく頭を撫でてやるとAは俺の服を強く掴んでまた泣きだした。


あー、こんな小っ恥ずかしい台詞良く出てきな…



お前がさっきの好きをどう捉えたかはわかんねぇ。

でも俺はお前を妹と…ノーマンの妹とじゃなく、1人の女として見てる。


あいつとは比べられないくらいお前にはいい所しか無いだろ、だから笑え…俺はお前の笑顔が好きだ

なんて…言えたらどんだけ楽なんだろうな。




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