118.自棄酒なんて -よじゃ- ページ21
同僚が話すエピソードは、優しい彼らしいものだった。
一度目は、両腕がちぎれそうなほどの荷物を持って歩いていたら、半分以上持って、わざわざ倉庫まで運んでくれて。
二度目は、エレベーターでたまたま乗り合わせて、疲れてそうだって、小さなお菓子をくれたって。
「降りるときに、頑張ってって、こう背中を優しくポンポンって。
その時の笑顔がもう、スペシャルでした!」
きゃーなんて顔を覆いながら照れる彼女を、周りは呆れたようにからかっていて。
いつもなら笑って参加するはずの会話に、何故か入ることが出来なかった。
どうってことないはずエピソードが、胸にチクリと刺さって、ざわざわする嫉妬みたいな感情に戸惑ってしまったから。
「報われないなぁ、それは。残念だね」
「いいんです!見てるだけで楽しいんですから!」
からかう言葉も、返される言葉も、ひとつひとつが胸に響く。
いつも、当たり前だと、思っていた会話のはずなのに。
なんで?
思い当たった事実が、あまりに予想外で。
今になってなんで?
実感した途端に、後悔に変わった。
降り積もるような気遣いに、いつの間にかその存在が大きくなって。
だって彼のくれる言葉のいくつもが、私を励まし、支えてくれて。
その度に、胸が締め付けられたから。
でもいまさら好きですなんて
そんなこととても、言えそうになかった。
「チーム替えは、結構頻繁だからねー、チャンスが無いことも無いんじゃない?」
「やめとけよ、ダメになったらすげー気不味いって、わかってるだろ?」
「だーかーらー、いいんです、ペンなんですから。恋愛どうこうなんてバカなことまでは考えてませんよ」
「ほんとかー?どうするんだよ、言い寄られたら」
「え?そりゃ…ちょっとは…揺らぎますけど」
「だろ?やめとけって」
「もう、夢が無いですねー。いいじゃないですか、好きになるくらい」
「A、どうしたの?眠くなっちゃった?ぼぉっとして」
「え?別に…もう、子ども扱いしないでよ。おかわり、ちょうだい」
「お、やる気。どうした?」
「明日午後からだから、今日は飲む!」
「いいなぁ、私10時集合」
「私なんて、7時集合ですよー」
「じゃあ2時まではイケるな」
「イケませんよ!どういう計算ですか!」
暢気なやり取りに、無理やり身を預けて。
久しぶりに、同僚の家にお泊りしてしまうほど、たくさん飲んだ。
自棄酒なんてね。
ほんと、情けない。
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舞桜(プロフ) - 素敵な作品に出会えた事が嬉しいです。これからも書き続けてください。 (2015年11月29日 13時) (レス) id: 03ef754c9c (このIDを非表示/違反報告)
井上よじゃ(プロフ) - 全然気づかず…恐ろしくお返事が遅くなりまして申し訳ありません!!(土下座)いたわりのお言葉ありがとうございます!今回の連載はいい思い出になりました♪共同執筆はなかなか難しいですが、気分はいつも2人で一つ、でこれからも頑張ります♪ありがとうございます! (2014年11月29日 23時) (レス) id: cae000c27e (このIDを非表示/違反報告)
ちづ(プロフ) - あかねさん» こんにちは、ありがとうございます♪完結まで・・待ちたい・・(汗)すみません〜、私のせいでずいぶんお待たせしましたね(><)呆れず読みに来てくださって本当にありがとうございます!最近は企画する時間もなくて・・申し訳ない(汗)当面、自分の連載がんばりますww (2014年6月22日 9時) (レス) id: dd0328dcfc (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - お二人の単独作品も大好きですが、新たな企画ものをこっそり期待しています。いつも素敵な作品をありがとうございます(^^) (2014年6月18日 22時) (レス) id: c6e7bfcddb (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - 連載お疲れさまでした!お二人のチームプレイは抜群ですね。私は完結まで待って一気読みしたいタイプなので最終章は目次を見ながらワクワクしていました。改めて、もう一度最初から熟読して楽しみます~(^.^) (2014年6月18日 22時) (レス) id: c6e7bfcddb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちづ・よじゃ | 作者ホームページ:http://aojirushi.net/
作成日時:2013年2月26日 23時