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112.その声(SM) -ちづ- ページ15

(SM)

隣に腰掛けて。
前を向いて、淡々と話す。


静かに話す、その声が好きだ。


はしゃいでる笑い声も、
仕事のときのはっきりした指示の声も、
こうして僕に話しかける、静かな声も。


僕の耳から入って、僕の体の中に溶け込む。


病気で亡くなった、お父さんのこと。
形見の指輪の話。
ドンヘとお墓参りに行ったこと。

Aが僕に、そんな話をすることが不思議だった。

偶然聞いてしまって事実を知っていたけれど、
こうして本人から聞くことにはならないだろう、
どこかそういう、諦めのような気持ちがあって。


ただ、相槌を打って聞いているだけの振りをして。
僕の心がざわざわと騒ぐ。


驚いたんだ、ヌナ。
前はそんな話、仕事の仲間になんてしなかったよね?

どうしてそんな話を、僕に?
お礼って、何?


頭の中でそんな疑問がぐるぐる廻って。
さっきのキュヒョンの言葉を思い出す。


『最近少し、変わった気がします。』


その変化は明らかにいいものだと思うけれど。
Aへの思いを断ち切ろうとしている今、
僕には少し、戸惑いを感じる変化で。


…素直に喜べない。


誰の手で、そんな風に笑うようになったの。


僕が。
僕が一番に、Aのそばでその笑顔を支えたいのに。

それはもう、叶わないことで。


ざわざわ、うるさい胸の内を抑え込んで、
Aの言葉を一つ一つ、受け止める。


不意に、
前を向いていた彼女がこちらに顔を向けて。


「前に、その、言ってくれたことがあったでしょう?
守るのも、守られるのも、一方通行じゃないって。」

SM「うん。」

「それを聞いて、急にわかったような気がしたんです。
こう、心の真ん中に、すとんと落ちてくるような、そんな言葉でした。」

SM「…。」

確かにそんな話をした。
あのときAは、少し無口になって。

「意地を張って、何をしてたんだろうと思って。
守られることで弱くなる、そう思ってたんですよ。
弱いからみんなが守ってくれたのに。
どうしてそれを認めずに、負けたくないって、そればかり思ってたんだろうって。
そう思いました。」


SM「…。」


黙り込む僕を心配そうに見て、
わかりにくいですかね?なんて、ちょっと首を傾げて。


SM「いや、…わかるよ。」


どんな表情を取っていいのかわからない。


Aは僕に構わず、
にっこりと笑って。


「ソンミンさんのおかげです。
恥ずかしいんですけど、
私、その時初めて、やっとわかったんですよ。」

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舞桜(プロフ) - 素敵な作品に出会えた事が嬉しいです。これからも書き続けてください。 (2015年11月29日 13時) (レス) id: 03ef754c9c (このIDを非表示/違反報告)
井上よじゃ(プロフ) - 全然気づかず…恐ろしくお返事が遅くなりまして申し訳ありません!!(土下座)いたわりのお言葉ありがとうございます!今回の連載はいい思い出になりました♪共同執筆はなかなか難しいですが、気分はいつも2人で一つ、でこれからも頑張ります♪ありがとうございます! (2014年11月29日 23時) (レス) id: cae000c27e (このIDを非表示/違反報告)
ちづ(プロフ) - あかねさん» こんにちは、ありがとうございます♪完結まで・・待ちたい・・(汗)すみません〜、私のせいでずいぶんお待たせしましたね(><)呆れず読みに来てくださって本当にありがとうございます!最近は企画する時間もなくて・・申し訳ない(汗)当面、自分の連載がんばりますww (2014年6月22日 9時) (レス) id: dd0328dcfc (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - お二人の単独作品も大好きですが、新たな企画ものをこっそり期待しています。いつも素敵な作品をありがとうございます(^^) (2014年6月18日 22時) (レス) id: c6e7bfcddb (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - 連載お疲れさまでした!お二人のチームプレイは抜群ですね。私は完結まで待って一気読みしたいタイプなので最終章は目次を見ながらワクワクしていました。改めて、もう一度最初から熟読して楽しみます~(^.^) (2014年6月18日 22時) (レス) id: c6e7bfcddb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちづ・よじゃ | 作者ホームページ:http://aojirushi.net/  
作成日時:2013年2月26日 23時

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