【d!】幸福のおまじない【sha】 (ページ2)

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シャオロンがのぞいたその先には、彼が両手で抱えられるくらいの籠がひとつ、ぽつりと放置されていた。

「……なんや、ただのカゴか」

どうせそこらの乞食のために、教会の奴らとかが置いていったものなのだろう、来るだけ無駄だったと踵を返したその瞬間。

——ふえぇ

籠から、泣き声が聞こえた。

「オイオイマジかぁ……」

口端を引きつらせるシャオロンをよそに、泣き声はどんどんと弱々しくなっていく。これだけの大雨だ、シャオロンより後にこの道を通るような人間はいないだろうし、彼が連れ帰らなければこのちいさな命は明日の朝には失われてしまうだろう。

魔法使いだといっても、シャオロンは童話に出てくるような悪い魔女ではないつもりだ。少なくとも目の前で失われかけている命を見捨てては置けないほどには、優しさを持ち合わせている。それに、過去の自分と同じような状況の赤ん坊を放置する気にはなれなかった。
のちのち教会の運営する孤児院にでも預ければいいか、と自分を納得させて、シャオロンは籠を持ち上げた。