十六話 ページ17
-side A-
『うー…うぅ…痛い…っ』
登れば登るほどに空気が薄くなる。
元から呼吸も普通の人より下手くそな僕が山登りだなんてどうかしてると思われるだろう。
それにここは狭霧山。普通の山より酸素が薄くなる。
加えて僕は鬼の胃液で溶かされて肌が痛い。
衣服と肌が擦れるとまるでやすりで肌を擦れられているような感覚になるほどだ。
それでもこの山を登る理由は一つだけ。
『こんにちわ、お二人とも』
小屋に失礼させてもらったが二人の姿が見えないため、彼らの色を置い、森奥へと入って見つけた。
真剣を構える炭治郎くんと、それをじっと見ている鱗滝さん。
多分鱗滝さんが彼の太刀筋を見ていたのかな?なんて一人で思いつつ、二人に挨拶を。
「海瑛さん!」
懐いた子犬のように明るい笑顔でこちらに振り向いてくれる炭治郎くん。
泥のついた顔を見る限り、相当転がされたんだなぁということがわかる。
鱗滝さんが気を使ってくださり、二人でお話する時間がやってきた。
毎週、任務の間を縫って彼に会いに来ると約束したからだ。
だからたとえ体が痛くとも今日は絶対に行かないといけないと思っていたのだ。
『今日も泥まみれですね』
羽織の内側に入れておいた手ぬぐいを引き出せば、泥まみれの彼の顔を拭いてやる。
きっと僕が帰ればまた修行のために泥まみれになるのだろうけれど、今は綺麗にした方が気にしないで済む。
青い波の絵が描かれた手ぬぐいが茶色く汚れていくが、別に気にはしていない。
結構とりにくい泥もあるらしくかなり強めに拭っていると、彼が不思議な顔をしていることに気付いた。
言葉にすると「むんっ」というような表情。頬を膨らませたその顔は年相応というか、愛らしかった。
『…痛かったですか?』
「へ…?」
『いえ、すごい顔をしてらっしゃったので』
首を傾げ、少し微笑んで語りかけてやると彼は頬を染めながら俯いてしまった。
何か、まずいことでも聞いてしまっただろうか?
一人で不安になりながら彼の返事を待っていると彼は口を開く。
「海瑛さん」
『はい』
「怪我…してませんか?」
なんともまぁ、鋭い子だ。
136人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
八雲(プロフ) - とても続きが気になります!!更新楽しみに待ってますね! (2019年5月27日 21時) (レス) id: ee1ccd9f95 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:とりまろ。 | 作成日時:2019年5月5日 14時