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好きなだけ食べて呑んで大笑いした2人は気付けばソファーに凭れて眠っていた。時刻は深夜2時半を過ぎたところ。私も含め仕事だったのだ、そりゃあ身体も疲れているだろうし、明日は2人も休みだと言っていたから寝かせてやろう。
毎回ではないものの、うちで食事をすると気が抜けるのか、酔ってうたた寝、酷い時は朝まで寝てしまう時もある。特に松田と萩原に関しては他の3人よりも多い。今更、気にもしないけどね、気を抜ける時くらい抜いてくれていい。
ブランケットをかけ、片付けを終わらせてから風呂に入った。疲れた、疲れたけれど2人が来てくれて良かった。肩に入っていた力がふっと抜けたように少し楽になってゆっくり湯船に身体を沈めた。
髪を拭きながらリビングに戻ると目が覚めたのか松田が虚空を見つめている。
「おーい」
「ん、」
「目、覚めた?寒い?」
「いや…」
これは寝ぼけている。
「寝てていいよ、休みだろ、明日」
焦点の合わない瞳を黙ってこちらに向けている。どうしたものか、寝かせてしまうか。何も言葉を発しなくなった為、肩を軽く掴んで元の体勢に戻すべく松田の正面に回ると、首元を強く引き寄せられた。突然のことにバランスを崩して危うく伸し掛りそうになった、何だ?目がしっかり覚めたのか?
「まつ「やめて、くれ…」
やめてくれ、何を?松田の顔はこの位置からでは見えない。掠れた声が耳に届くだけ。
「やめろよ…やめてくれよ…なあ…」
寝ぼけているのだとしたら、私に言っていない可能性もあるけれど…
「A…嫌だ…やめ、ろ…行く……な…」
肩に頭を預け、また寝息を立て始めた松田。やっぱり寝言か。
やめてくれ、やめろ、嫌だ、行くな
何を見ていたんだろう、いつの私に言っていたんだろう。私にその言葉を叫びたかったことがあるんだろ?
「……在れば、何か違った、のかな…」
やめられないんだ、嫌だと言われても
行かなきゃならない、私は、行かなきゃ
透明な囲いの中で守られていられたなら、どれだけ君たちを安心させることが出来るのか、理解しながら私はそれを突き破ろうとしてる。今も。
松田の手が触れた首元には、背中まで続く傷跡がある、傷など気にもしていない。小さなものなら身体中にあるのだから。けれど、私の傷が痛みを与えるのは私自身ではなく君たちだから、時々自分の傷が憎くて堪らない。堪らないのに、
ああ、矛盾が渦を巻いて吐きそうだ
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作者名:真琴 | 作成日時:2018年4月20日 23時