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数日戻ってきていた降谷は現在不在。あちらの仕事だ。
忙しくないわけではないのだが、山と積まれていた書類は粗方片付き、警備企画課には少しだけ落ち着いた空気が流れていた。
「今日は数ヶ月ぶりの定時上がりが出来るかも」
「確かに。今日はいけそうだな」
「決裁文書もバンバン判子押すから持ってこーい」
「こういう日に行ったほうがいいんじゃねえの?検診」
そうだ、元はといえば緑川があの2人にその情報を伝えたせいで私は降谷にまた傷口触られる羽目になったんだ。一応プライバシーだぞ、行ったのは警察病院だけど。
「萩原たちに言っただろ、この前の話」
「どうせお前自分じゃ降谷に言わないじゃん」
「言わなくていいの!会わないで済んでたんだから!」
「いや、あいつがそのこと忘れると思うか?下手したらまた電話の嵐だぞ」
「それは嫌だ……」
「話戻すけど、」
「この前、併せて見てもらったから平気」
「ならいいけどさ」
面倒見がいい。それはよく知ってる。こいつもなかなかのオカンだ。降谷と違って自ら強行手段に出ることこそ殆どないものの外堀から埋めてこられていることが多々ある。今回もそう。あの2人に伝えたら降谷まで辿り着くのなんて下手したら秒だ。分かっててやってるから質が悪い。
「睨むなって」
「そういう目なんです」
「そう怒るなよ、俺も降谷もみんなお前のこと心配してんの」
「そんなの分かってるよ!分かってないわけないだろ!」
遣る瀬無くなるのだ。私にとって周りにいる人たちは全員大切な存在。その中でも同期の5人に関しては「大切」の一言で済ませてはしまえない、自分を構成する要素の大部分を占める存在。それなのに常日頃からこんなに心配させている。嬉しいなんて疾うに通り越して情けなくて仕方がない。緑川を怒鳴るのはお門違いなのも承知だ。でも、
「したくてしてんだからさ、俺らは。別にAが気にすることない」
「したくてって言われても…」
「変わらねえなあ…心配くらい自由にさせろよ、伊達が泣くぞ」
「ああもう、本当に泣かれそうだからやめて…」
可笑しそうに笑い始めた緑川を見て、守られているんだな、と感じる。それは毎回のこと。私自身も守る側の立場であるのに。手を伸ばせば真っ先に掴んでくれる。あの昏い影に呑まれないように。分かってるよ、分かってるんだよ緑川。だけど知ってるから見ててくれてるんでしょう、私が走り出さないように。私はブレーキを持ち合わせていないから。
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作者名:真琴 | 作成日時:2018年4月20日 23時