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・降谷視点
泣き続けるAを車に乗せてから、自宅に送り届けていいものか迷ったものの、この状態で1人にするのはあまりにも心配だった為、うちに連れていくことにした。
人形のように固まったままのA。触るぞ、と一言声だけ掛けて抱き上げ、そのまま部屋に連れていった。何も言葉を発さずに膝を抱えて蹲っている。
「…A」
「……シャワー…」
「え?」
「シャワー…借りて、いい…」
「ああ、」
Aがシャワーを浴びている間に俺もスーツを着替え、今日何があったのか聞くべきかを考えていた。聞いても答えるとは限らないし、何よりAがあんな風になった姿は初めて見て少なからず動揺もしている、
「…降谷」
「あ、出たのか」
「着替え、ありがと…上だけ借りた」
短いワンピースのようになっているTシャツ。流石にサイズが大きすぎたようだ。髪も濡れたまま、Tシャツから伸びる首や手足は本来の白さを失い赤くなっている
「…擦ったのか、真っ赤だぞ」
「…気持ち、悪くて…」
その一言で何となくの想像はついた。まただ、腕を抱き締めて、唇を噛み締めている。
「局長には、言わないで…ほしい」
「何で」
「ったしが……っわたしが、駄目な…だけで…っ」
「A」
「平気、なんだ…別に、慣れてる……で、も」
そこで言葉を途切れさせ、自分の腕を強く掴み一度収まった涙をまた溢れさせるAは、言葉に出来ない恐怖と戦っているようにも見えて、酷く小さくて、
「…嫌だったら言え」
「え、」
少し距離を取り座っていたAを抱き上げ、脚の間に下ろしそのまま抱き締めた。触れられたくない場所に、傷に、俺の顔が直に当たっている、それは承知の上で。
案の定、身体を引こうとするA。腕は緩めてやらない、嫌なら嫌だと言え、言えよ
「…怖いのか、」
「……っ」
泣きながらも首を縦には振らない。どうして、怖いんじゃないのか?あんなに震える程、そんなに泣く程、怖いんだろう。何故そう言わない。
「っ無理に言い聞かせたって何も変わらないだろ…!」
思わず出た大きな声に、Aが肩を揺らしたのが分かった。らしくない、こんなに感情的になるなんて…不意に滴が顔に落ちた、Aが俺の額に自分のそれを合わせ、泣いていた
「わた、しは……っ」
上擦る声が、耳に届く
「こんな、感覚…っいらなかった……!」
それは悲痛な叫びだった
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作者名:真琴 | 作成日時:2018年4月20日 23時