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個室に移ってからも暫く退院は許可されず、持ち出しても問題ない仕事だけでもやらせてくれと頼んだのだが緑川は頑として首を縦には振らなかった。降谷には当たり前だが頼んではいない
代わる代わるお見舞いに来てくれる同期たち。全てではないけれど降谷にした話を4人にも伝えた。怒鳴り合いにこそならなかったがそれぞれ複雑そうな顔をして私を見つめていた。
仕事も出来ない、外にも出られない、手持ち無沙汰で身体も鈍りそう。復帰して足を引っ張ることはしたくないな
「Aくん」
「え、あ、はい。すみません」
「退院は一週間後に決まったよ」
「あ、ありがとうござ「ただし、」
「ただし…?」
「月に一度、必ず検査に来なさい」
何故だ。痛覚が失われたと分かった警察学校時代に検査はしている、今回もだ。私の身体にそれ以外の不調はない。
「君は…自分の状態がどれ程危険か理解しているかい?」
「…特に今、不調はありませんが…」
「外的要因以外の痛みが体内で起きても、君は気付けない、それも分かっているのかな」
「一応は…理解している、つもりです…」
「見えない場所の異変は周りも助言が難しい。警察官という立場とは関係なく、自分の為に定期的な検査は怠らないで欲しい」
真剣な声色でそう伝えた医師。勿論分かってはいたのだが、そこまで強く念を押されるとは思わなかった。自分で考えるより私自身は脆い存在なのか、周りから見たら
「どうした?検査帰りか?」
「緑川…」
「浮かない顔だな、怒られたのか」
「当たらずとも遠からず?あ、一週間後に退院していいって。長く掛かってごめん」
「良かったな。でもまだ無理はすんなよ?」
「程々には致しますが…」
「控える気ないだろ、お前」
Aらしいけどな、と私の少し前を歩く緑川は歩みを進めながら何度も私を振り返る。
「…そんなに見張らなくても別に脱走しないから」
「や、別にそんなんじゃなくて」
「じゃあ何だよ」
「Aだな、って思って」
変な奴、そう言いかけて言葉を呑み込んだのは、その顔が悲しげな笑みで満たされていたから。
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作者名:真琴 | 作成日時:2018年4月20日 23時