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パンッ
「わ、な、なに?」
「やっぱ後でにするか?降谷と言い合った直後だしさ」
「それは別に…」
「今日は一段とだけど…最近やけに考え事してるだろ、どした。」
「……ごめん…」
顔の目の前で手が叩かれ意識を戻す。あの後、相談したい案件があると緑川に言われデスクで話をしているのだが、数年前をぐるっと一周してきた私の頭は間違いなく集中力に欠けている。
緑川だってきっと止める。松田も萩原も伊達も絶対に行くなと言うはずだ。考える、行くなと言われこの足が止まるならこういう絡み合った感情を持つことはなかったのではないかと。
「……謝るなよ、調子狂うだろ」
「…それはちょっと聞き捨てならないけど」
「ぶっ飛ばされずには済んだんだな」
「物理攻撃は受けたけどね」
「……あのさ、A」
「ん、」
「たまに思うんだけど…お前、傷を受けたがってるみたいな時ないか?」
予想していない言葉。
傷を受けたがっている?
「…それは、私がドMだと…?」
「AはSだよ、ってそうじゃなくて」
お前の能力なら避けられる攻撃も、わざわざ受けに行ってるように見える時がある。怖くないとか痛みがない以前に自分から危険な位置に動いてるような、そんな感じ
緑川はそう言った。
それは私が無意識に取っている行動なのか?確かにあの事件の時も私はボウガンを避けなかった、自分の意志で。ただ、あれはまた別で、
でも、別って何が?
「悪い、別にAにそういう意識がないならいいんだよ。俺がそう思っただけだから」
「そっか…」
「わざとなら…流石に俺もお前をぶっ飛ばすけどな」
「珍しくどっかのゴリラみたいな発言だなあ」
「お前、降谷にもうちょい絞られてくれば?」
避けられる攻撃を避けない理由は何か、誰かが近くにいるなら庇う為と言えるけれど、記憶を巡らせれば巡らせるほどそれ以外の場面が浮かんでくる。私はどうしてあの時、攻撃を受ける必要があった?
分からない。
自分のことなのに分からないことが増えていく、 時々思うんだ、私が一番、私のことが見えていないんじゃないかって。このままでいいなんて思っているわけではないのに、私は、それにすら恐れを抱けない。
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作者名:真琴 | 作成日時:2018年4月20日 23時