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・降谷視点

Aは時々、帰れと言い出すことがある。

それは決まって俺とAしかもう残っていない時で、部下の前では気を張っているつもりでも付き合いの長さなのか分かるのだろう。半ば強引に書類を奪われ、今回は頬を抓られたがデコピンや酷い時は腹に拳を沈めてきたりする。あいつは怪獣だ、誰が言い始めたかは忘れたが、食事に限らず全く直らない口の悪さ、都合が悪いと黙秘、問い詰めればノンストップで口撃の嵐。言うことを聞かせる為に容赦なく手を出す、手に負えない。俺をゴリラと呼ぶが、お前も大概ゴリラだよ、と言いかけたことが何度あったことか。

ただ、理解はしている。自分の感情に正直で、研がれた日本刀の如く真っ直ぐに曇りのない意志を持つのがAAという人間だ。正直、公安向きではない、出来ないのではとすら思っていた。感情を露にしてはいけない、国の為なら誰かを見捨てることもある。柔軟な思考、任務に必要なら嘘を吐き、人の弱みを逆手に取ることに心を痛めない、その感覚を捨てられる。求められるのはあいつとは真逆の人間。しかもここは警察庁だ。

しかし、それは俺の杞憂に終わった

確かに企画課内での仕事中や、プライベートでは感情のままに表情を変えるAだが、それが任務となるとまるで別人、俺たちの知っているAはそこにはいなかった。本人はスイッチがあるのだと昔言っていたことがある。私であって私でなくなるスイッチ、感情を全部消す、なんかそういうもの。まあ似たようなものは俺の中にもあるし、理解出来なくはないが、あいつのそれは俺から見ても異常な域。そのスイッチは恐らくあいつの中の全てのリミッターを外すスイッチだ。普通の人間なら誰もが無意識に働かせているリミッター、それは生存本能から来るもの。これ以上動いたら危険だ、と頭ではなく身体が動きを止める。

それが全て外れてしまう恐ろしさを俺は知っている。もう思い出したくもないのに決して消えてはくれない、あいつの目。


『離せ、零』


殺意とも憎しみとも違う、背筋が凍る程の底知れない、あれは、正義だった。それまでに出会ったこともないような。



握った拳にはじっとりと汗が滲んでいる。たった一箇所暗闇に浮かぶ、今しがた出てきた部屋の明かりを見上げた。笑顔の影にあの目を思い出す度に、言い知れぬ不安が胸を支配していく。





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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:真琴 | 作成日時:2018年4月20日 23時

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