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トン、
トントントントントントントン、
「あ、ごめん、ずっといた?」
「ずっといた。急ぎか?それ。」
高速でデスクを叩く音が聞こえ画面から視線を移すと横に緑川が立っている。いつからいたんだ、全然気付かなかった。
「あー…それか…」
「これは片付けてから帰りたい。何なら片付くまで帰りたくない、気持ち悪い」
「手伝うか?」
「いーよ、緑川だってろくに寝てないでしょ。他にも近々合同会議があるやつもあるし」
「あんま根詰めすぎんなよ、」
「あいよ、あ、そうだ、ちょっと頼んでいい?」
今日は緑川も風見も既に上がって、降谷はいるだろうけど席を外してる。仮眠か?一課との合同捜査、最近増えたな、また会議。
ガサッ、と袋の擦れる音が聞こえ、椅子ごと振り返る、流石早かったな。
「ありがとーみど…あれ、降谷?」
「そこで預かった。これで買えるだけおにぎりとサンドイッチ、だとさ」
私が緑川に札を渡して、伝えた言葉をそのまま復唱した降谷の両手には大量のおにぎりとサンドイッチ。ごめんよ、緑川。重かっただろうし、コンビニの棚は私のせいで空だ。
「まさか全部今食べる気か?」
「半分朝の分。昼抜いたしいい加減死ぬ」
「にしたって食いすぎだろ…」
怪獣か、と溜息。知らない間に私は同期に怪獣と呼ばれていたようだ、暗号みたいだな。
コンビニ袋を私のデスクに置いてから自分の椅子に座る降谷、席が近いから降谷のデスクに積まれた書類もよく見える。あいつちゃんと休んでんのかな。ここにいない時は向こうで動いているんだろう。理由があの書類だけなら私がやればいい。
「それ、向こう関係の報告書?」
「それはもう済ませた、こっちのだ、溜まってる」
「なら帰んなよ、私やるから」
「お前だって抱えてる案件があるだろ」
「そりゃあるけど、降谷よりまだ私の方がマシだろ。ここの仕事だけなんだから」
降谷のデスクの山を丸ごと移動。おい、と立ち上がって取り戻そうと歩いてくる。隠しきれない疲労がいつもの覇気を失わせているような気がした。
左頬を抓る、なかなか力を入れて
「いてえ…」
「もう帰れ。これは私がやる。帰って寝ろ、寝てください」
「あのな…」
人には口煩く言うくせに自分は休みたがらない。ワーカホリック、ほんとそう。頑固なゴリラ。
「何の為に私がいるか考えろ、お前の仕事が回ってきたくらいで参ったりしねえよ」
観念したように笑った降谷は、助かる、と頭に手を置いて部屋を出て行った。
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作者名:真琴 | 作成日時:2018年4月20日 23時