11. ページ12
「A!」
「よ、久しぶり」
「今日はこっちに用事か?」
「うん、ちょっとね。もしかして出るとこ?」
「いや、今は一段落ついたところだからこれから書類を片付けないとな」
「…私も戻ってやらなきゃいけねえんだった…」
警視庁の廊下で運良く伊達と会った。話しながらずっと私の頭を撫でている、結構な勢いで。会うと毎回これだ、後輩たちにもやっているのを見かけたことがあるから癖だな。
その手が止まったので、顔を見上げると軽く頭を叩かれた、何だいきなり。
「聞いてるぞ、また黙ってたんだろ」
「終わったと思ってたのに…!」
「まあ、少し前に聞いた話だし良くなったんだろうが、感心しねえな」
「…悪かったと思ってるよ…降谷めんどくせえんだもん…」
そう、伊達からの説教がまだ残っていたのだ。治ったならいい、とのことでとりあえず解放してもらった。伊達もなかなか忙しそうだ。休みが合ったら呑みに行く約束をして、私も仕事に戻る。デスクの書類…増えてないといいけど…
「…嫌な予感はしたんだよ…」
「おかえりなさい、Aさん」
「はい、ただいま…あーあ、増えてやがるよクソったれ…降谷ー…」
「おかえり、早かったな」
「してきたよ、打ち合わせ。問題ない。このまま進める」
「そうか、分かった」
「…増えたのか…あの僅かな時間に…」
「その死んだ目やめろ、部下に伝染するだろ」
「伊達に会ったよ…降谷と緑川にも宜しく言っとけって」
「そういえば、伊達には暫く会ってないな、元気そうだったか」
「伊達はいつも元気…頭がもげそうな程撫でられた…」
「………A、昼飯食ってないのか」
「食ったわけねえだろ…?エネルギー不足で泣きそうだ…」
警視庁での打ち合わせは、早く終わりはしたが昼過ぎまでかかり、すぐに戻ってきた。食事を買うのも忘れて。詰めている時は食事もろくにせず連日徹夜も当たり前の公安だが、私にそれは不可能だ。例え両手が塞がっていようと食べないという選択肢はない。
「とりあえずこれで我慢しろ」
降谷が引き出しから出したのは所謂バランス栄養食。多分、大量に溜め込んでるやつ。
「…さんきゅ…」
「足りない、って顔に書いてある」
「足りないよ、足りないけど仕事が先だろーが!」
「俺に当たるな、うるさい」
悔しいが正論。お腹が空いて力が出ない、と席で呟いたら、パンのヒーローみたいですね、って言ったのは風見。似てるけど違うし、その呼び方はなんか嫌だ。
362人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:真琴 | 作成日時:2018年4月20日 23時