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「送る」
「は…」
「俺がコーヒーを買って戻ってくるまでに準備しとけ」
そう言い残してドアの向こうに消えた降谷。傷口押しといて送ってくなんて優しいんだか優しくないんだか分からない。降谷には私の傷口＝触るものなんだろう、知ってたけど。
「みんなして降谷にチクるんだよ…」
「それは言わないAさんが悪いです」
「そんなこと言うなよ風見、あの顔見た？めんどくさいじゃん…」
「…常々言ってますが、我慢のしすぎは賛成しかねます。降谷さんは心配してるだけですよ、分かってるんでしょう」
「我慢してないんだけどねえ…開いたってもちょっと、ほら」
「…見せなくていいです、仕舞ってください」
シャツを捲って見せると見事に顔を歪ませた風見に申し訳なかったからすぐに仕舞った。自分の傷ならいざ知らず人の傷なんか見せられてもいい気はしないだろう。
「まあ、ほどほどにして風見も帰んな。終わんなきゃ置いといて、やっとく」
「そんなこと出来ると思いますか…」
「出来なくても、しなさい。とにかく今日は帰ってちゃんと寝な。」
その内降谷が戻ってきたのでジャケットを着て、今日だけで何度も通った廊下を並んで歩いた。指先にこん、っと当てられたのはよく冷えたコーヒーの缶。
「悪かったな、」
「思ってない」
「思ってるさ」
「嘘吐け…毎回触ってくるくせに…」
「帰ったらちゃんと寝ろよ」
「お前が電話してこなきゃな」
「飯食えよ」
「さっき松田と食べた」
「あと」
「ああもうなんだよ、オカン…」
「そのシャツはもう捨てろ、落ちないだろ」
「…元からそのつもりだよ…どこまでオカンなんだ、お前は…」
血の付いたシャツを一瞥して一言。毎回毎回言わなくても流石にもう落とせるなんて思ってない。潔くゴミ箱だ。汚れたシャツを着るようなだらしないことはしないし、シミ一つないシャツでないとやはり私にも降谷にも同僚にも不都合があることは重々承知している。降谷の微妙なオカン体質はもしや私が一因だったりもするかもしれない。
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作者名：真琴 | 作成日時：2018年4月20日 23時
